TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

映画『グッバイ、レーニン!』赤旗よ!永遠なれ!ごめんやっぱ無理!

やべっ、資本主義だ。隠せ隠せ。

この映画は「東ドイツ共産主義は無くなったけど、母さんの周りだけでも共産主義のままにしてあげよう!」という物語だ。熱心な共産主義者の母が、気を失っている間に共産主義東ドイツごとなくなっていることに気づいたら、きっと死ぬほどびっくりするはずだ。というか死ぬと医者に言われてしまった。

なので息子たちは母の暮らしを共産主義時代のままにするよう奔走する。共産主義時代の漬物、共産主義時代の車、共産主義時代のテレビ番組。でも無くなった事実そのものの隠蔽は、永遠に続かない。献身的な努力もいつかは終わる。だけど終わる時は母が亡くなる時だ。どうすれば良いのだろうか。失われたものを取り戻したり、克服したりすることができないなら、どうすれば幸せになるんだろうか。

 

資本主義の獲得と共産主義の喪失、表裏一体のドイツ

第二次大戦後の統治でドイツが政治形態で二分されたと思ったら、次は壁で物理的に二分されて、最後には資本主義が共産主義を飲み込んだ。でも飲み込まれた共産主義が心の拠り所だった人もいるわけで、「俺達が若い頃はここは共産主義国だったんだぜ」とか「ボリシェビキは良かったなあ」みたいなことを言って懐かしむ人もいるそうだ。そういう感情をドイツでは「オスタルギー」と呼ぶらしい。いつだってなんだって、懐古してしまう人はいるものだ。

日本だって国民総スマホ中毒になってもなお「ガラケーは良かった」「スマホはどうもいかん」みたいなことをいう人はいる。過去や失われたものが全て悪で、未来や得たものが全て善なわけではない。どれだけ未来がやってきても、どれだけ生麺みたいなインスタントラーメンが発売されても、僕はサッポロ一番塩ラーメンが一番好きだ。

 

国ごとに違うヨーロッパ映画、ガチャのような映画選び

ドイツ映画を観たのはおそらくこれが初めてで、ドイツらしさとは一体何なんなのか想像もつかないけど、国が割れて、くっついて、古い価値観が一気に書き換えられていく光景を見せられたら、きっと目が回ってしまうだろう。世界史とかヨーロッパ史をきちんと勉強すると、もっとこの映画の表現の意味とか、メッセージとかが分かるようになるんだろうか。やっぱり教養は娯楽を引き立てる。あと「この映画のアメリみたいな音楽だな」と思ってたら、担当がアメリと同じヤン・ティルセンという人だった。よく気づいたぞ自分。

ヨーロッパの映画事情が全くわからない。でも映画雑誌やレビューサイトは極力読まず、勘で映画を選ぶようにしている。だから適当に選んだ映画が面白かったら、当たりを引いた気分になれるし、したり顔でレビューも書ける。つまらない映画だったらとりあえず流しっぱなしにしておく。片手間で観られるだけつまらない演劇よりはマシだ。しかも観てる間は何も考えずに済む。映画デートに出かけて隣の異性のことばかり気にして、映画が頭に入ってこないような体験はできないけど、最初からそんな可能性がないことは分かっている。羨む余地もない。

次はどの国の映画にしてやろうか!

タイトルが直訳なところも良い

一番好きな映画は永遠にアメリだけどな!