TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

終戦の日のための本と映画

70年以上前、日本は戦争で世界中からボコボコにされた。今ならあけすけに「アメリカに勝てるわけないのになんで戦争なんてしたんだ」と言えるが、当時の日本にも一応「アメリカと戦争したらどうなるんだろう」ということを考えた人たちがいた。 猪瀬直樹の「昭和16年夏の敗戦」には、アメリカと戦争をする日本について研究した「総力戦研究所」について記されている。この総力戦研究所軍国主義だった当時の日本には珍しく、軍人以外にも官僚や民間人も参加して日本の総力戦の結末を予想した。そして「日本は敗戦必至」という結論を導き出し、当時の内閣にそれを突きつけた。結局アメリカの経済制裁やら世論やら軍部の圧力やらで日本は負け戦に突入していった訳だけれど、地に足着けて数字と資料と知恵でこの国の行く末を正確に(彼らは敗戦時期まで予想していた)予想することができていたのだから、富国強兵も決して無意味ではなかったんだろう。ただ敗戦する予想と聞いた東条英機が「でも大和魂がー」と言っちゃってたり、実は東条英機は開戦を回避する役割があったんじゃないか、というエピソードも一緒に知ると、富国強兵の功罪をいっぺんに浴びせかけられたようで大変苦々しい思いがする。

同じく終戦を描いたもので、「日本のいちばん長い日」という映画がある。1968年の岡本喜八監督版と、2015年の原田眞人監督版があるが、岡本喜八監督版の方が極限状態の日本の様子が伝わってくるし、原田眞人監督版は役所広司の芝居がかっこいいのでどっちも見応えがある。 この映画は8月14日から15日のポツダム宣言受諾と玉音放送に至るまでの日本中枢の動きを描いたものだ。陸軍はまたカチコミかけるしNHKに突っ込むし玉音放送の構成に四苦八苦してるし観ている方もかなり疲れる。天皇陛下玉音放送の内容が閣議で決まり、そこから清書やら書き写しが始まるものの、清書中にテキスト差し替えが発生して半紙を上から貼って対処する様を見せられるなど現場の苦労盛りだくさんの映画である。役所仕事も国の中枢で生きているんだな!大変だな!と同情せずにはいられない。

今の日本は戦争こそしてないものの、争いそのものが耐えないのは人類必至の歴史である。