TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

馬が見えなくても、野次がうるさくても、応援したくなるのが園田競馬

<前回のはなし>

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自宅にはソダシのぬいぐるみ置き、即パットにもUMACAにも登録し、すっかりにわか競馬ファンになった6月の終わり頃、見事に宝塚記念を外して「しばらく競馬とは距離を置こう」と落ち込んでいたら夏がやってきた。

中央競馬は函館や福島などで開催されるようになり、わざわざウインズに行かなくてもネット中継を見ながら馬券が買えるようになったとはいえ、やはり競馬は現地で見るのが一番楽しい。

おまけに僕は土日休みと平日休みが入り混じった働き方をしているため、平日に開催している競馬場で遊ぶこともできる。ならば地方競馬に行くしかないじゃない。

関西には「園田競馬」というウインズとは比べ物にならないくらい荒れたオッサンたちが集う競馬場がある。そしてアクセスは阪急園田駅から無料バスで5分だという。京都から見ると阪神競馬場より近くてびっくりした。そんなところに競馬場なんてあっただろうか。しかし開催日の十三駅には競馬新聞を持ったオッサンがちらほらおり、みんな園田駅で降りて行ったのでそれについていくと無事園田競馬場にたどり着くことができた。

なんというべきか、園田競馬場はものすごくローカルでカオスな施設だった。

入場には100円が必要なのは阪神競馬場と同じだが、ここの場合は100円玉をゲートに入れるゲームセンターのようなスタイルだった。またスタンド席以外は限りなく平らで、パドックでは馬との距離がものすごく近い。

そしてその周りにはフードコートのような感じで飲食店が並んでおり、小さな居酒屋が入っている長屋のような場所から小走りで馬券を買いに走るオッサンをときおり見かけた。最初は食い逃げではないかと思ったが、レースは店内のモニターで見るらしくオッサンは馬券を片手に毎回戻ってきていた。真似てみるとちょっと楽しい。

園田競馬場のコースはダートのみで、芝や障害といったコースはない。レース距離はスターターの位置を変えて調節をするらしく。また定期的にトラクターがトンボをかけて足跡を消していた。ダートコースと聞いて茶色の土のコースを思い浮かたけれど、園田のコースは白っぽく、遠目に見れば砂のような感じがした。

そしてレースになると馬が白い砂塵を巻き上げるのでレース中にどの馬がどこにいるのか時折分からなくなって大変困った。最善列だろうと場内のモニターだろうと同じようなものだったので、最終的にはサングラスをかけてスタンド最上段から見るスタイルに落ち着いた。

オッサンたちは良く食べ、良く飲み、良く喚いていた。

失速した馬がいれば「ヴォケェ!!」「シネェ!!」「カスゥ!!」といった野次は当たり前で、たまに「KOROSU=ZO」の怨嗟も聞こえてきた。喫煙所で馴れ馴れしく「今日▲■★?」と早口で絡んで来るオタクもいた。最終レースの時間帯にはスペシャルウィークのコスプレをした男性がゴール前を闊歩していた。場末には場末なりの寂れ方があるだろうけれど、ここはサラダのボウルをひっくり返して何度か踏みしめたようなカオスな場所だった。

それでも馬は一生懸命走っている。メインレースともなれば観客だってそれなりに応援もする。この日のメインレースだった重賞「摂津杯」では、故障からの復帰戦であるツムタイザンが優勝を決めて、みんなから拍手と声援を贈られていた。みんな暴言以外も言えるとは予想外だ。ともあれ、こういうドラマがあるのも競馬の良いところだ。

競馬場の苦手な部分を煮詰めたのが園田競馬だけど、それと同じぐらい園田競馬を好きになる要素が転がっていた。夏には東京に行く機会があるから、試しに東京の競馬場でも見てみようかと思いながら部位の分からないホルモン串を食べ、ビールを飲み干し、4角に向かって大きな声で「そのままァ!!!」と叫んだ。園田競馬は小さい競馬場だから直線が短いけれど、かといって刺されては困るのだ。