TANNYMOTORS

人の味を知った熊は再び人里に降りてくる。

映画『ゆるキャン△』|大人になることがこんなに怖いことだなんて誰も教えてはくれなかった

映画『ゆるキャン△』の情報公開から半年、そして劇場公開から一カ月が過ぎ、劇場が臭いだのオタクが煩いだのといった噂も落ち着いてきた8月、そろそろ見てもいい頃合いだろうと気まぐれに有給を取った私は平日朝イチで映画館に向かっていました。

twitterでは公開日からずっと「ゆるキャン」をミュートにしていたお陰でネタバレを食らわずに済んでおりました。しかし情報公開のタイミングで妄想を爆発させるオタクに巻き込まれたせいで、おかしな先入観だけがずっと頭の中に残っていたのです。

1人で都会に出てきた志摩リンは自分でも気づかないうちに少しずつ消耗していく。キャンプに行く気力も失い、フルローンで買った大型バイクも乗らないままバッテリーは上がり、でも地元に残った皆は相変わらず元気で、その差が眩しくて...私は...

みたいなストーリーなんでしょ????だってオタクがそう言ってたから!!!アニメに現実の辛いところを持ってきてキャッキャしてたのを聞いたから!!!!

そんな状態で劇場に行ってきたんです。まともじゃありませんよ。入場者特典でフィルム貰ったのに気づかないまま財布に放り込んで座席に腰を下ろすと無意味な居心地の悪さが…

うっさい!!!!!!!(京都の映画館ではおなじみのCM。ドリームホームと双璧をなす上映直前に映画の期待値を狂わせるバグ)

はい、観ました。お疲れ様でした。

昔好きだったものを大人になっても変わらずに好きでいられたら、きっと幸せだよね。という暖かい作品でした。

でもオタクは基本的に余計な深読みをしますし、虚無から情報を生み出すことさえできてしまうのです。それが解釈と言うのならきっとオタクは日光から栄養を取りだすことだってできるでしょう。

まず大人になったしまりんが満員電車に揺られて通勤してるのを見て心が痛い。会社で先輩や上司にフォローされながら仕事をしている様子も心が痛い。そもそも大人になった野クルメンバーの姿を見ているだけで心が痛い。

アニメのキャラクターが「大人」に変化して、現実の自分たちのいる「大人」のフィールドに向かってきているという事実が怖いのです。なぜなら彼女たちは自分たちが「大人」のフィールドで体験してきたことを、もしかすると体験してしまうかもしれないから。

例えば銃口を向けられて恐怖を感じるのは銃そのものが怖いからではなく、そこから弾丸が発射されるかもしれないから怖いのです。大人をやっていくことに恐怖を感じている自分にとっては『ゆるキャン△』のキャラクターたちが大人になっていく様子さえ怖いのです。

というわけでいい映画でした。ホンマヤデー。