TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

スピッツが歌うウサギのバイクってドゥカティのことだと思う。それで走るしまなみ海道も最高だろうな。<四国カブツーリング3日目>

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目が覚めるとベッドが広くなっていた。それは夜中にGなヤツが現れて泣きながらフロントに助けを呼び部屋を変えてもらったからだ。宿代返せと思わないこともなかったが、古いビジネスホテルと知ってこれまでも使ってきたのだから、この程度で喚いても仕方がない。そもそもここを定宿にしている理由は朝食のバイキングが美味しいからだ。ここで挽回してくれれば問題ない。朝食会場が開くと同時に部屋を出て2階に降りる。

会場の前には献立と産地が書き出されている。毎度のことながら良くもまあここまで豪勢な朝食を用意してくれるものだと思う。普段のカロリーメイトサプリメントを朝食にしている自分が馬鹿みたいだ。ご飯とおかずをそれぞれ1回ずつお代わりして、牛乳は3杯飲んだ。毎回こんな調子なのでいつも「食べ過ぎたな」と思いながらチェックアウトの準備をすることになる。

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チェックアウトを済ませてさっさとバイクに向かおうとしたら、後ろからフロントの方が「昨晩はご迷惑おかけしたようで申し訳ありません」と追いかけてきた。こういうこともある、気にしていないと答えておいたが、むしろ自分に言い聞かせているような気がした。ホテルだろうとこういうこともあるのだ。

無心でバイクに荷物を運ぶと、シートの上にバナナと缶ジュースと紙片が袋に入れた状態でおいてあり、紙片にはよくありがちな見送りの文言が書かれていた。それを見て無性にやるせない気持ちになってしまい、改めてフロントに向かい「大変ありがたいのですが生ものを積んで走るのは怖いです」と言って返してしまった。善意とはいえ受け取れないときもある。

今日の目的地はしまなみ海道大久野島である。しまなみ海道といえば愛媛と広島の間の島々を結ぶ橋だ。この日は途中の大三島から更にフェリーで大久野島に渡ってキャンプ泊となる。

橋は原付でも歩行者や自転車と同じように渡ることができるし、通行料も1回100円とか50円とかでとにかく安い。小銭の準備が面倒だったので50円の料金所でも100円を放り込んでしまったが、推しに金を捧げることは善行とされているのでこれで良い。

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この日は最短でも100キロ程度と余裕のある行程だったので、橋が架かっている島々はすべて一周しながら巡ることにした。島々の間隔はそれなりに狭いのに大きな船が行き交っているし、何なら造船所もあちこちにあるのでどこを見ても絵力のある場所だった。

しまなみ海道のサイクリングロードは白線の横に青い線が引かれているし、橋の出入り口にはその島の地図が置かれているのでわざわざ手持ちの地図を確認せずともスムーズに走ることができる。それに寄り道してもすぐにもとの道に戻れるので遊びがいがある。

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島々から見る海も良いけれどそれぞれの島の暮らしの景色も見ごたえがある。呉服屋の看板や使われていないネオンサインやら、こういうところを見つけるたびに「これが個性だよな!生活だよな!」と妙に感動してしまう。

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昼食は確か穴子丼だったが、写真は撮り忘れた。海沿いを走ることに夢中になりすぎていた。

愛媛県最北にある大三島からフェリーでキャンプ地の大久野島に向かう。戦後までは陸軍の毒ガス工場として地図から消され、最近は野生のうさぎがたくさんいる島として観光地になっている。休暇村が置かれていてリゾート気分も味わえるが、毒ガス工場の遺構や資料館もある不思議なところだ。

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上陸するとすぐにうさぎに取り囲まれる。エンジンを吹かしてもどかないものだからキャンプ場に行くまでにずいぶん難儀させられた。奈良の鹿並に強欲な奴らだ。

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この島に来るのは2度目だったので遺構や資料館には行かずキャンプ場で過ごしていたが、過去の写真を見ていたら重厚な建築群ばかりだったので改めて見ればよかったと少し後悔した。資料館には当時の工員の給与明細なんかも展示してあって毒ガスだけでなく島そのものの歴史を覗くことができる。

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大久野島のキャンプ場は海沿いにあり、食料こそ上陸前に買い込む必要があるが自販機はすぐそばにあるし、休暇村の温泉も入りに行けるのですこぶる快適だった。酒がぬるくなっても冷えたコーラで割ればすぐにハッピーになれる。

キャンプ場の周りは膝丈ぐらいのフェンスで囲われており、一見するとウサギが入ってこないようになっているが、奴らは穴を掘ってガンガン侵入してきていた。テントの前や酒を飲んでる僕の前にもお構いなしにやってくるが、あげられる食べ物もないのでとりあえず話し相手になってもらった。コロナの時勢でもあるので極力人と話さないようにしてきたが、ウサギ相手なら余計なことも言ってこないし自粛警察にもならないので安心だ。

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この日はカルストで見損ねた星空を拝むことができた。海抜ゼロメートルの割にはなかなか悪くない。ウサギがたまに目の前を駆け抜けていくのもよく考えれば非日常の光景だ。

欲を言えばコンデジで星空を撮るには限界があるのでそろそろ新しいカメラが欲しい。でもこれを書いている7月の時点でも例の10万円がやってこないので、きっと6年使い続けたならいっそ潰れるまで使えということなのかもしれない。それにそろそろ家に帰る頃合いだ。バイクのオイルだって交換してやらなきゃいけないし、大変残念だが仕事をしなければ旅の資金も捻出できない。

この日はスピッツのウサギのバイクを聞きながら眠った。幸いなことにうちのバイクは壊れそうにない。さすがスーパーカブである。

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