TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

宗谷岬まで突き抜けて。<北海道カブツーリング2日目>

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朝5時の札幌。北海道に到着して早々にネカフェの世話になった。一部の限界ツーリング愛好者は快活クラブを実家と呼んでいるらしい。確かに最近は鍵付きの個室もあるし、その辺の簡易宿所よりはるかに豪華になっているからついそこに流れるのもよくわかる。

今日の目的地は日本最北端の宗谷岬、の途中にある留萌だ。札幌からはおよそ150キロ。寄り道しながら走ってもキャンプ場で夕焼けを眺めることができる計算だった。北海道初日なのでまずは「慣らし」である。

身支度を済ませてまずは札幌市内にある「平岸高台公園」へ向かう。ネカフェから出て10分足らずで到着したので北海道に来た感慨に浸るほどの暇はなかった。

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さてここは見ての通りただの公園である。だが写真の右奥に見える建物は旧HTB社屋。そしてこの場所は「水曜どうでしょう」の前枠と後枠のロケ地として使われている公園なのだ。水曜どうでしょうファンにとってここは聖地の一つになっている。私も水曜どうでしょうは好きだったが、「近所にあるらしいし一応寄ってみるか」程度の気持ちで来てしまったのと、時刻がまだ6時にもなっていなかったのでこの時は「あー、たしかにな」程度にしか思わなかった。もったいない楽しみ方だな。

そこから札幌市街を抜けて北へ向かう。ここでようやく今いる場所が北海道であることを理解した。地平線の彼方まで伸びる道、今まで見たことないくらい広い空、ただ走るだけでめちゃくちゃ楽しい。なるほどこれが北海道か。そりゃあ走りに来たくなるよ。道幅も広いし都市間の道に信号は全くないので止まることなく走り続けられる。これが「優勝」ってやつだ。私は今まさに「優勝」しているのだ。

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カブは順調に走る。むしろ順調すぎて、最初の目的地だった留萌の黄金岬キャンプ場に午前10時に到着してしまった。いくらなんでも早すぎる。ここは海辺の道路沿いにテントを張るスペースがあり、炊事場とトイレもあって料金は無料、しかも日没まで拝めるという素晴らしいキャンプ場だ。だが10時からテントを張ってキャンプというのはやはりもったいない。それに全然走り足りない。とりあえず写真だけ撮って、引き続き北へ向かうことにした。

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初日から予定を前倒すことになるとは思ってもいなかった。正直北海道の道を侮っていた。時速60キロ1時間走ったら1時間後に60キロ先の場所にいる。算数の問題に出てくるたかし君みたいなことになっている。

留萌の北にある「おびら鰊番屋」という道の駅で休憩していると、静岡から来たというおじさんが話かけてきた。軽バンで北海道を回っているらしく、今日の目的地は宗谷岬だという。現在地から宗谷岬まではおよそ180キロ、時速60キロで走れば3時間で着く計算だ。机上の空論としか思えないが、それが成立するのが北海道である。

延々海沿いを走るのに飽きてきたので、少し内陸部を走ることにした。風に煽られることもないしこれはこれで快適だ。地図に「宮の台展望台」というスポットが紹介されていたので写真を撮りに寄ってみた。遠くのサロベツ湿原も一望できて見事な景色だ。海も空も陸も美しく飯も美味いとなるといよいよ勝ち目がないな。

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宗谷岬にはすぐ南にある牧場を経由して向かうことにした。四国カルストでも牛は見たが、北海道は比べようもないくらい牛が飼育されている。それにとんでもない数の牧草ロールを見た。遠くから見るとマシュマロみたいだが、実際は高さが2m位あるので投げつけられたらたぶん死ぬ。

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牧場からは風車郡も見える。クリーンエネルギーの代名詞みたいな風力発電だけど、風車のそばまで行くとゴウンゴウンとモーターの音が響くのであんまり居心地は良くなかったりする。しかし大きなプロペラが回っていること自体がカッコいい。

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牧場の高原を降りたらそこは宗谷岬だった。「日本最北端到達」の実績はこれで解除された。北海道行き自体も適当な決定だったし、宗谷岬を目的地にしたのも「一応行くか」程度のスタンスだったので達成感はまるでないが、道中が楽しかったのでこれで十分だ。旅は移動中が一番楽しいというのは小学校の遠足の時から変わらない真理だと思う。

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家族に写真を送るために一応自撮りも済ませた。自撮り棒ではなくセルフタイマーを使うあたりが痛々しい。それに構図も服装もめちゃくちゃだし、1ミリも楽しそうに見えないが、家族に無事を知らせるにはこれで十分だということにした。

写真を家族のグループラインに送ってバイクに戻ると、そこには留萌で会った静岡のおじさんがいた。「君のカブ速いねえ」じゃねえよ。この再会をどう受け止めたらいいんだよ。おじさんは釧路方面へ向かうという。私は適当にキャンプすると言って別れた。流石にもう会うこともあるまい。

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運命的再開を果たして時刻は午後3時半。キャンプ地をどこにするべきか考えねばならない。稚内にするか、海沿いを時計回りに進んだ先にするか。宗谷岬についた時点でこの日の走行距離は350キロを超えていたが、せっかくなので行けるところまで行くことにした。

今回の宿泊地は浜頓別町の「クッチャロ湖畔キャンプ場」。湖畔でキャンプとはさぞ風流だろうと思って向かってみたら到着がチェックインギリギリになってしまったが、それでも日没は拝むことができた。まさか予定していたキャンプ地から260キロも先の場所でキャンプするとは。予定とはなんぞや。

さてテントも建てたのでとりあえず買い出しと給油に出る。キャンプ飯が楽しいのはわかっているが、正直なところ北海道においてはセイコーマートに食を委ねたほうが楽だし美味い。このせいでご当地グルメをガンガン無視することになるのだが、こればかりはしょうがない。だって温かいご飯が目の前にあるんだもの。そりゃ食うよ。

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なんとなく動画まで作ってしまった。編集は難しいしやっぱり宗谷岬は遠い。

 

<続き>

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