TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

mouse on the keysにお祓いしてもらった日

2022年12月3日、mouse on the keysのライブを観るために神奈川県の平塚まで行ってきた。10年以上前に大阪の名村造船所跡地で観たのが最初で最後だったのに、あのときのカッコよさを何倍も上回る密度のカッコよさに脳天から足の薬指まで痺れた。

バンドの存在を知った時は、曲の構成や楽器の使い方が自分の知っているものとは全く違っていて、どう例えたらいいかもわからず、ただただカッコいいとしか表現のできない唯一無二のバンドだと思った。

10年前に聴いたときより遥かに上質な音楽体験ができたのは、自分の年齢や経験による音楽感?の変化、ようは少しくらい”分かる”ようになったからかも知れない。でもそれ以上に、mouse on the keysの音楽が10年以上磨かれ続けていたからに違いない。あのドラムの空気を震わせる熱量や五感すべてを揺さぶってくる体験は、決して替えの効かない、ライブでしか味わうことのできないものだった。

終演後に平塚駅へ歩きながら初冬の冷たい空気を浴びていると、自分の憑き物はすっかり落ちていた。あそこまでレベルの高いものを見てしまうと、自分が些細なことでうだうだしているのがつくづくバカらしくなって、目の前の濁った空気、霞がかった雑念がすっきりと消えてなくなり、なんだか清々しい気分になっていた。

どうして平塚なんて聞いたことのない場所でライブをやるんだろうな、とか、そもそも何で今さらライブにいこうと思ったのか、自分でも不思議だったけれど、2022年最高のライブとまさかこんな形で出会えるとは思いもしなかった。帰りの交通手段を確保しないまま夜光バスの強行軍で上京し、池袋駅ではホームを間違えてダッシュする羽目になったけれど、今回のライブは本当に良い旅の目的地になった。

ライブを聞き終えて真っ先に「書こう」と思った。やっぱり自分は書き続けて、1度くらいは何かを世に出すくらいの事をしたいと真剣に思った。人にここまで思わせることのできる力を音楽は持っている。自分の書く文章にそんな力があるとは思っちゃいないが、それでも「mouse on the keysから得た音楽の力がこんな形になったんだぞ」ぐらいは自分の文章で証明してみたいのだ。