TANNYMOTORS

人の味を知った熊は再び人里に降りてくる。

競馬好きは全員テニプリの乾だと思っている、ウインズ京都

30代になって初めて競馬をやってみた。FXとCFDを除けば生まれて初めてのギャンブルである。競馬の知識なんてウマ娘を少しかじった程度だから、「中山の直線が短い」と「仁川には坂がある」こと以外は特に知らない。あとはオッサンが喚き散らしながら競馬新聞や馬券を投げ捨てていることぐらいだろうか。

馬に関する記憶も高校の修学旅行で行った北海道での乗馬体験ぐらいで、馬の背中にまたがり馬場を歩くだけだったが、それでも3メートル近い高さから友人を見下ろすのはなかなか愉快だった。しかも乗り降りする階段の傍でピタッと止まってくれるし、表情は大変穏やかだし、そのくせ本気を出せば原付よりは早く走れるというので、「君はなかなかカッコいいやつだな」とその時は素直に感心したのを覚えている。

それから時を経て30代が体に馴染んできた頃、「馬が一生懸命走るってのはカッコいいよな」と思い、とりあえずウインズに行ってみることにした。いわゆる「場外馬券売り場」というもので、全国の中央競馬の馬券を買うことができるし、レースも中継されているし、当然オッサンたちが中継画面を見ながら叫んだり嘆いたりしている様子を見ることができる。さぞ混沌としているかと思いきや、馬券を買うオッサンたちは競馬新聞やスマホをじっと睨みながら勝ち馬を予想しているのでその様子はさながらテニプリの乾のようであった。

この時に買った馬券はナミュール複勝900円で、3着までにゴールできれば勝ちとなる。ATMのような機械にマークシートと1000円札を入れると、その代わりに「馬券」が出てきた。大きさは名刺より少し小さく、紙質は新幹線の切符より柔らかかった。これを100円で買うやつもいれば数十万で買うやつもいるし、100万円に化けるかもしれないし紙切れになるかしれないというのだからギャンブルって変なシステムだ。

レース中はオッサンたちに混ざって「頑張れ!」と叫んで、ナミュールは最後の直線で中段からぐんぐん前に伸びて2着に入った。妻の買った単勝100円のカイザーミノルは外れていた。馬券を再び機械に入れると1000円の馬券が1600円ぐらいになって出てきた。あぶく銭はさっさと使うに限るので、夕飯は王将で瓶ビールを飲んだ。

お金が増えたのは良かったけれど、それだけならドル円天然ガスの売買に手を出しているのと大して変わらない。むしろあちらの方が扱う金額も勝ち負けの結果も大きい。それでも馬が一生懸命走っている姿はなかなかカッコよかったので、次は競馬場に行ってみることにした。十数頭の馬が走るのだからさぞカッコいいことだろう。

ウインズから出るとき、オッサンたちが負けた馬券や競馬新聞を次々とゴミ箱に捨てているのを見た。彼らも結局のところ乾のようにデータを捨てるのだ。お前は性学の恥なんやで。