TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

映画『博士の異常な愛情』世界最高のダイジョーブ博士が人類を救う

よし核戦争だ!共産主義者は皆殺しだ!おい待てバカ野郎!

あらすじ

頭のイカれたアメリカ空軍の司令官がソ連への核攻撃を命令。しかも命令の取り消しにはその司令官の設定した暗号コードが必要で、司令官は基地で籠城中。頭を抱えるアメリカの首脳陣。会議室に呼び出したソ連の大使は「ソ連が『核攻撃を受けた際に世界中に放射能をばら撒く爆弾』を作ったらしい」なんて言い出す。水爆投下は阻止できるのか!?世界の命運やいかに!?でも現場は現場で水爆を落とすのに全力なんだ!絶対に落としてやるからな!

1964年公開、スタンリー・キューブリック監督「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」このべらぼうに長いタイトル。「または」以下の文章がいかにも厨二病っぽいが、「博士の異常な愛情」と直訳されたストレンジラブ博士が名前に負けず劣らず厨二心をくすぐるマッド・サイエンティスト。アメリカに帰化したドイツ人で「大統領」のことをたまに「総統」って言い間違えるし、ずっと薄ら笑い浮かべてるし、ヘルシングのあの人少佐そっくりだった。

世界は滅亡!でも選ばれた人間は地下の世界で繁栄!イエーイ!

この映画の一番の見どころがここ。というかほぼエンディング。

でも結局水爆投下は阻止できなくて、地球上の生き物は10ヶ月以内に滅ぶことが確定。うなだれる首脳陣の中でただ一人ストレンジラブ博士だけは楽しそうに語り出す。「選ばれた人間を地下のシェルターに避難させれば大丈夫!この会議室のメンバーは優先的にシェルターに入る権利がある!期間は100年!男女比は1:10!あと女は全員美女な!」

この時の狂気的で合理的なアイデアを熱弁するストレンジラブ博士があまりに魅力的で、全部観終えたあとこのシーンだけもう一回観た。義手であろう左腕を叩いて噛みついたり逆に殴られて首を絞められたり、車いすに乗っていたのに最後は立ち上がっちゃったり、きっと自分自身の脳みそが人類全体の問題の解決策を計算していることでオーバーヒートして、ハイになっちゃったんだろう。生き残る人間は簡単に選別できるとか、今の国家の規模には何年で戻るとか、世界が終わるのにそれに落胆する間もなく頭をフル回転させて未来を考える博士が、どうしようもなくカッコよく見えた。

各々が各々のすべきことをした。結果は最悪だったし世界は滅びるけど、少なくとも自分たちは助かる。だから今からできることをやろう。生き残る自分たちのために。でも外は核の炎に包まれる!という感じで映画は終わる。冷戦時代のブラック・ユーモアな映画だけど、とりあえずストレンジラブ博士がカッコ良かったからそれだけで見る価値がある。暗い室内にいるのにずっとサングラスつけてるのもカッコいいよね。博士と同じサングラスがほしい。

この映画のお供にはバカでかいのに安い単純な味のピザと500mlのコーラ、もしくはジンとか強い酒がオススメ。「いいぞ!みんな死んでまえ!」と言いながら一人で見てるとすごく楽しくなってくる。

 

ブルーレイのくせに1500円だった