TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

昔思い描いた未来は、今よりもう少しロマンチックだった

携帯のヘッドセットがすっかり無線化されてしまったおかげで、独り言かと思ったら電話でした、みたいな人をしょっちゅう見かけるようになった。路上で見かけるだけでも少しドキッとするのに、先日やよい軒で電話しながら夕飯を食べている人がいて、その話し相手は実在しているのか、それとも我々と違う次元にいるのか判断できず、おかげで味噌カツ煮定食がどんな味だったかさっぱり分からなかった。

昔の特撮ものに出てくる宇宙警備隊とか未来パトロールとかヨーロッパ企画の酒井善史みたいな人は、決まって前腕に装着した電子辞書型通信端末を開いて本部と通信をしているが、それくらい「通信中ですよ」感を出してくれたほうがこちらとしても安心できる。つまり、仕込みiPhoneの森翔太が一番安心できるということだ。理論的には一応そうなる。多分。

一瞥しただけではマイクもイヤホンもあるか分からないように通話ができるなら、人形にマイクを仕込めば「本当に人形と会話している人」も実現できるはずだ。名前はシリかアレクサでいいだろう。そしてぬいぐるみの名前を呼んで「明日の天気を教えて」と尋ねるのだ。ぬいぐるみの運搬が困難ならベビーカーにでも載せてあげたらどうだろう。

誰もが見たことのある未来に生きている人たちが、今まさに現実になろうとしている。この瞬間に立ち会えたことを、僕は正直それほど光栄に思わない。