TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

ふるさとは 遠きにありて 思ふもの

室生犀星がこの詩を書いたのは、東京に行ったもののイマイチ馴染めずときどき金沢に戻ったりしていた時期であるという。そのときのメンタルでこれを書いたということはつまり「遠く離れると故郷のこと考えちゃって辛いわー」ではなく「故郷のことは遠く離れてるときに思うものだわ…」ということであるらしい。

大学進学から家を出て、それから盆と正月にしか帰らないような生活を続けていると、久しぶりに実家に帰っても懐かしさより居心地の悪さのようなものを感じる。自分の時間軸と家の時間軸がどこかずれているような違和感かもしれない。ひょっとすると、あまりに遠く離れている地点との時間の流れは相対的に異なるというアレがこの違和感の根源かもしれない。そうなると帰省の対処法がほとんどない。飲んで食って寝る。お笑い番組で正月しか見ないような師匠クラスの漫才を見る。「君の名は」だろうと家族みんなで見る。それくらいしかやることがない。なぜなら、それ以外の故郷での過ごし方を知らないからだ。

ちなみに室生犀星のこの詩は『そして悲しくおもふもの』と続く。犀星はこの違和感を悲しみに置き換えていた。多分実家に戻ってもすることがなかったんだろう。