TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

推しの力でページをめくる

最寄りの本屋がこの春に潰れてしまい、本を買うには1ブロック東に行かなければならなくなった。実に面倒くさい。しかし本を紙で所有したい主義者としては電子書籍お茶を濁すのも、通販を使って本屋での未知との遭遇を逃すのも嫌なので、しぶしぶ新しい本屋に通うことにした。
新しい本屋はビジネス街にあり、店頭の平積みは半分がビジネス書だった。棚には手前からビジネス書、資格本、参考書の順で並び、文芸や漫画は店の奥に追いやられていて、最深部には趣味の雑誌が置かれていた。面積は新しい店の方が広いと思う。でも購買層が全然違うからカゴにポンポン漫画を放り込んでいると、なんだか場違いなことをしているような気がしてくる。簿記2級を放り出して悪かったよ。気が向いたらまた勉強するから勘弁してくれよ。
眉月じゅんの『九龍ジェネリックロマンス』が面白くて「うひょー」だの「ヒャー」だの言いながら既刊の4冊を一気に読んだ。鯨井さんは大変可愛いし、飯はどれも美味そうである。
ただ、今まで通っていた本屋だったら手書きのポップ付きで推されていただろうなと考えて寂しくなった。あの店の漫画担当の店員さんは別の店に異動したのだろうか。背が高くて細身でゴツゴツしたブーツを履いていた漫画コーナーの店員さん。あの人が推していた漫画はどれも面白くて、一度だけ「おすすめしてた漫画心に刺さりましたよー」と言ったことがある。店員さん推しを理由にあの店に通っていたのは否定できない。だからこそ潰れた時は悲しみもひとしおであったのだ。

推しも本屋もなくなる時代なんてろくでもねえや。