TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

旅は移動中こそが楽しい。だからバイク旅は全部が楽しい。<四国カブツーリング0日目>

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1週間の休暇を得たが、特に何もすべきことはなかった。こういう時はバイクでぼんやりと走るに限る。

目的地はどうするか。九州には去年から行きたいと思って地図も買っていたけれど、梅雨入りもしていたし雨も降りだしていたので、今回はその手前にある四国を走ってみることにした。

週間予報を確認して、滞在期間は雨が降り出す前日までとした。四国までのルートは大阪南港から愛媛に出ている夜行のフェリーだ。宿はキャンプで2泊、ホテルで1泊、フェリーで2泊。四国にいるのはおよそ丸3日。
最初はどこまで回れるか見当もつかなくてフェリーの中でツーリングマップをにらみながら唸っていたけれど、案外スムーズにバイクは走ってくれた。四国カルストで牛を眺め、しまなみ海道は往復し、今治で焼豚卵飯を食べ、下灘駅で自撮りも頑張った。

四国も仕事ではいくらでも訪れていた土地だったので、どこかでうんざりしたりしないか心配だったけれど、フェリーで上陸しバイクで走る行程のおかげでそれほど精神が参ることはなかった。

旅の最初のクライマックスは、フェリーへの乗船だった。
受付を済ませ、「東予行き」の札をミラーにぶら下げ、小さなカブで大きなフェリー乗り込んでいく。なんだかクジラに飲み込まれるような感じだった。
大型トラックやトレーラーの隙間にバイクを滑り込ませると、甲板員の人たちがあっという間に車止めを差し込んでバイクを固定してくれた。土曜の夜の便だったけれど、バイクは10台もいなかった。梅雨入りしたばかりだし、誰もまだ出かける気にはなっていないのだろう。

甲板からエレベータで客室の階層にあがると吹き抜けのロビーに出た。まるでホテルのようだと思ったが、どうやら南港~東予間のオレンジフェリーは最近リニューアルしたらしく、どこもピカピカで一番安い客室でさえベッド付きの個室という豪華さだった。もちろん大浴場もレストランもついている。

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10年ほど前に神戸から香川へ向かった際に乗ったジャンボフェリーはカーペットに雑魚寝だったが、オレンジフェリーに限って言えば、夜行の便で船中泊というよりホテル付の船に滞在するような感覚で、なんだか寝るのがもったいないくらいだった。


夜10時に出航の予定だが、乗船自体は夜8時からできた。おかげで乗船して風呂に入り食事を済ませてもなお、船は南港に停泊したままだった。


到着予定は翌朝6時。一応8時まで滞在しても良いことになっているが、やはり船のハッチが開くと同時に走り出すほうがおもしろそうだ。イメージは映画プライベートライアン冒頭の上陸シーン。スティーブン・スピルバーグの傑作である。ろくでもないことを考えながら早々に寝た。少しだけ船のエンジン音が聞こえた。燃費はどれくらいなんだろう。

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翌朝船が愛媛に到着し、車両甲板へ降りてよいとアナウンスが流れると同時に、ヘルメットを片手に持った奴らが各々のバイクのもとへ向かう。これからおよそ800キロ、赤ベコ号と名付けた赤いカブで四国と瀬戸内を巡る。とりあえずカルストに向かうが、その先のルートは決まっていない。去年の今頃は長野にいたが、四国はどんな景色が見られるか。車両用のハッチが開いて船内が明るくなる。MG42はなさそうに見える。ハッチで滑って転ぶのが怖い。去年は右肘がえぐれたから、なんとしても五体満足で帰りたい。

 

<つづき>

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