TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

舞鶴から小樽へのフェリー。静かにわくわくする時間。<北海道カブツーリング1日目>

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朝8時。微妙に狭いベッドで目を覚ます。わずかに聞こえるエンジン音と振動。でも疲れていれば快適に眠れるものだ。風呂の支度を持ってロビーに出るとテレビで船の現在位置を表示していた。おおむね佐渡島の北北西約150キロにいるらしい。もちろんスマホを見ても圏外なので電源は切ってしまった。

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船の大浴場からは日本海が見えた。誰もいなかったので素早く写真を撮ったが、結局僕が風呂から上がるまで誰も来なかったので風呂場と日本海を独り占めにしながらの朝風呂を楽しめた。湯船が少し左右に揺れていてさすが瀬戸内海とは違うなと思った。だが時化の日の風呂はどうなるんだろう。みんなシャワーだろうか。

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風呂から上がって船尾のデッキで体を冷ます。雲一つない青空と船以外何も浮かんでいない日本海が見事だった。船はおよそ時速50キロで進んでいるのでそれなりに風は強いけれど風よけの内側にいればのんびり潮風を楽しむことができた。9月の上旬なので気温はまだ高いはずだけれど、海を見ていればそんなこと気にならない。

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適当に海を眺めてから船内に戻り、ツーリングマップル蛍光ペンをもって旅程を考える。フェリーの到着は夜10時頃なので、到着地の小樽か札幌のネカフェで休めばいい。問題はそれからの予定だ。とりあえず北に行くことにした。ハチクロの竹本君が確か自分探しで宗谷岬に行っていた気がする。地図には小樽から札幌、宗谷岬まで線を引いた。ツーリングマップルでは「オススメだよ!」という道は太く塗られているのだけれど、蛍光ペンはほとんどその上を走っていた。

宿は基本的にキャンプだから行程に合わせて選べばいい。湖のそばにキャンプ場が置かれている傾向があるので、めぼしいところにマークを入れておいた。北海道のキャンプ場は数百円から無料のところが多く、Gotoキャンペーンどころのお得さではない。それにシーズンオフの平日だからサイトが埋まってることもないだろう。

それから事前に行こうと思っていた旭山動物園タウシュベツ橋梁に印をつけて、宗谷岬からそれらを巡る道に線を引いた。これで札幌の朝から3日分の旅程が組めた。1日の走行距離は大体400キロから250キロ。経験則的には1日の走行距離は最大でも250キロにしないとただ1日走るだけになってしまうと分かってはいたが、北海道を走ることが目的なのでもうこれで良いだろうという結論に至った。走行距離や出発時間の計算には地図アプリが必要なのでこれ以上考えても仕方がない。ただ給油ポイントだけはきちんと押さえておいた。カブには4リットルしかガソリンが入らない。いくら燃費が良いとはいえ200キロごとに給油しないと詰むのだ。

行きたいところに行くためのルートは組んだので船室に戻り地図をカバンに詰めてゴロゴロしていると「レストランで昼飯が食えるぞ」という船内放送が流れてきた。コンビニや売店で買い込んだ食料はあるけれど、こういう時にケチっても楽しくないのでいそいそとレストランへ向かう。丼か麺類かカレーというシンプルなメニュー大系だったのでとりあえず豚丼を食べた。帯広では豚丼を食えと地図にも書いてあったので先走ってしまったが美味しかったので問題ない。ご当地グルメに全く関心がなかったので教えてくれたことに感謝したいくらいだ。帯広に寄ることがあればまた食べてみよう。

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お昼を食べ終えても到着まであと9時間はある。ずっと海を見ていてもしょうがないし先の行程も決まりそうにないので再びベッドでゴロゴロして過ごす。少しだけ昼寝をして時々船内を散歩していたらいつの間にか夜になっていた。売店でフェリーのステッカーと「みそぱん」なる謎の菓子パンを買った。この「みそぱん」が妙に美味しく、かつ保存も効くようだったので四切れのうち一つだけ食べてあとの三切れはクーラーバッグにしまっておいた。まさかこれが後々活きてくることになろうとは。

午後9時過ぎに「そろそろ上陸するよ」というアナウンスが流れたので他のバイク乗りたちと一緒に車両甲板へと降りて上陸の準備。自転車を除けば他のどのバイクより自分のカブが一番小さかった。とはいえ一番可愛いのがうちのカブだという事実に変わりはない。隣の芝生は青く見えるが自分の芝は黄金色なのだ。船のハッチが開き甲板員が点々と並んでバイクを誘導し始めた。船内をできるだけゆっくり走り、慎重にタラップを降りる。これで一応北海道に上陸したらしい。ほんとか?しかし確かめようにもスマホの電源はまだ切ったままだった。

 

<続き>