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朝6時。愛媛県西条市の東予港にオレンジフェリーで上陸。今日は四国カルストを目指す。まずは西条市から高知に向かって伸びる国道194号線を走り、愛媛と高知の県境である寒風山へ向かう。日曜とはいえ早朝なので道は空いていて対向車もほとんどない。ただ見かけたバイクはなんとなくオフ車が多い気がした。ツーリングマップルを見返すと林道の記載が多かったので、四国山地は山遊びに向いてるところなのかもしれない。
「旧」寒風山トンネルを抜けて高知に入り、寒風山登山口から西に進む。時刻はここで8時を過ぎたぐらい。登山口というだけあって駐車場にはそこそこ車が止まっていて、山登りピープルが身支度をしていた。四国山地は千数百メートル級の山やら、西日本最高峰やらがあるらしい。寒風山登山口から西の道路は「UFOライン」と「石鎚スカイライン」と呼ばれている。名前はともかく四国山地を縦走するわけなのでここでようやくツーリングしているバイクを見かけることができた。それほど道幅があるわけではないものの、バイクで走る分には申し分ない。そもそも崖の方に落ちたら間違いなく死ぬので飛ばす気さえ起こらない。トンネルを抜けてこの景色が眼前に広がるのだから笑わずにはいられない。山腹を走りながらずーっとニヤニヤしていた。休憩のときに「これ以上笑うようならフルフェイスをかぶったほうがいいな」と反省するくらいの楽しい道だった。道中には岩盤を彫り抜いただけのトンネルがあったりしてタモリさんならうまいこと解説してくれるだろうと思った地理は勉強したけれど地学はよくわからない。だから目的地のカルストがどういう意味なのかも理解していなかった。とりあえず標高が高いので景色がいいのだろう、ぐらいにしか思っていなかった。黄金の国だって存在してなかったわけだし旅行の目的地なんてそれぐらいで選んだほうが丁度いいのだ。山道を下った時点で愛媛側に戻ってきたので、面河川と国道440号線に沿って再び高知を目指す。梅雨の長雨に突入する直前ぐらいに訪れたので標高が低いとやはり暑い。それでも川沿いの道は走っているだけで気持ちだけは涼しい。
国道440号線で高知入りするには3キロほどの地芳トンネルを抜けることになる。このトンネルの真上がちょうど四国カルストなので、かなりダイナミックな立体交差をしていることになる。そこからもう少し走ると梼原町に入るので、ここで昼食と食料の買い込みを済ませる。かき揚げ冷やしうどん。店の前にバイクが停まっていたから入っただけなので店の名前も分からないままである。でも四国のうどんは全部讃岐うどん的なテイストなので好きだ。
店を出て適当に坂を登り続けると四国カルストに着いた。正直カルストの景色が凄すぎて細かい道は忘れてしまった。四国カルストの道は山腹ではなく山脈を走っている。それに牛がいる。あとゴツゴツした石が飛び出ている。実に奇妙な景色だ。バイクに「赤べこ」とか名付けたのに目の前に本物の「ベコ」がいるのはなんとなく恥ずかしい。
それでも大変な絶景には変わりないので、早々にテントを設営してからもう1度同じ道を走ったり牛を眺めたり写真を撮ったりして大いにはしゃいでいた。夕方には大いにガスって来たものの、それまでに十分カルストを堪能することができた。
いわゆる「優勝」もできた。牛を見ながら牛肉を食べるのがレクター博士みたいでちょっと変な気持ちになったけれど、それを乗り越えてこそ楽しめるところもある。と思う。たぶん。
そしてこの日は7時に寝てしまった。キャンプツーリングの場合日の出と日の入りが睡眠と起床にリンクしてしまうのでしょうがないとはいえ、星空を見損ねたのが残念だった。でも牛と写真を撮りながら「また来るだろうな」と確信していたのでそのときに眺めることにする。果たして長野を超える星空は見られるのだろうか。そしてやっぱり山の夜は寒かった。そういえば四国って雪降るのかしら。
<つづき>