6尺=1ミョン=188cm

ぽつぽつと中途半端に焚かれている送り火を眺めていたら、大文字山の麓にある京都朝鮮中高級学校と朝鮮学校出身だった大学時代の先輩のことを思い出した。

その人は細身で背が高く、よくタバコを吸い、部室で真っ先に他人のジャンプを読む先輩であった。朝鮮学校時代のエピソードにも事欠かず、修学旅行で行った北朝鮮で、金日成像の台座に座ったら現地の人にバチクソ怒られただの、その時乗っていた万景峰号が日本に入港できなくなり帰れなくなっただの、日本国籍を選ぼうとしたら親戚に「祖国を捨てるのか」と説教されて北朝鮮国籍を取らされただの、当時はゲラゲラ笑いながらその話を聞いていた。

本人は気さくな人でみんなに慕われていたし、僕も面白い先輩だなあとしか思っていなかったが、その数年後実際に朝鮮学校に訪れてみると、教室に金日成金正日肖像画が飾ってあったりして、「すげえところで高校時代を過ごしてたんだなあ」と改めて驚かされた。あと美男美女が多かった。「めちゃくちゃ可愛い娘がおったぞ」との話は真実だった。

井筒和幸のパッチギで登場する朝鮮学校は滋賀の高校がロケ地になっているけれど、学校の雰囲気は京都の朝鮮学校とよく似ていた。実物はもっとコンパクトな校舎だが、古さは現物も映画も同じぐらいだった気がする。

たまに飲み屋で知り合った人が朝鮮学校出身ということがあるが、みんな決まって当時のエピソードを面白おかしく話してくれる。日本の学校と違うことをどう思っているかはさておき、みんな人に話せるような学校生活を送ってたんだなあと少しだけ羨ましく思う。

先輩は今何してるのかしら。先輩は身長がだいたい180cm=6尺ほどあり、先輩と出会った部活では尺貫法で距離を測ることがあったので、現場では先輩の身長を単位として「1ミョン右にずらす」、「0.5ミョン戻し」のように使うこともあったが、そんな名前の残し方をする先輩もそうそういないだろうよ。

あと多様性って経験則に基づくと別にそんなにダイナミックなもんじゃないと思う。「確かにいろいろあるよねー」ぐらいにしかならない気がする。みんなお互いにリスペクトとピースだぜ。