TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

公演『LAきょうとピラミッド/男肉 du Soleil』 愛と勇気の実験的空間

男肉 du Soleil大長編「LAきょうとピラミッド」の京都公演が終わった。初日前日に男肉を賛美する記事を書いたら団長やメンバーや制作の人々に拡散されてえらいことになった。このブログはSEOの実験場やら言えないアレコレやら多目的な場所だったから、人に読まれていることを目の当たりにして正直ビビった。そんな状態で迎えた公演初日。今回の男肉はこれまでとは物理的に違う構造をしていた。

あらすじ

男肉 du Soleil のメンバーはそれぞれの人生を歩み始めた。LAへ行く者、ピラミッドへ行く者、京都でダンスを続ける者。メンバーの人生は3方向へ分かれていく。そして3つの場所から男肉が弾け、そのエネルギーが共振して世界を動かす。その果てにあるのは天国か、それとも…あとすみだの正体はスプリガンだ。

見終わってみれば、「あ、ここかなり挑戦してる!」という意気込みがバキバキ伝わってくる公演だった。男肉らしさも保ちながら、でも新しい見せ方も入っていたり、そういった想いがあらゆるところから滲み出ていた。そもそも今回は、「舞台」が存在している事が一番の驚きだった。この記事には感想と、予想どおりのネタバレが含まれています。でもダメージはないから大丈夫だよ。

3つの場所という構造

今回は、舞台の上手(右側)が京都、下手前(左前)がLA、下手奥がピラミッドという、一つの舞台を3分割して物語が進行していく。舞台は横幅14メートルぐらいしかないのに、真ん中で2分割するだけでえらく狭くなったように感じた。客席に入った瞬間「ここで踊ったら足の爪が10枚は飛ぶんじゃないか?」とさえ思った。これまで見ていた男肉の公演は、構造物なんて一切なくて、最前列の観客には「床に飛び散った汗を拭く雑巾」が支給されることさえあったのに、少し立体的になっただけでとても新鮮に思えた。でも空間が3分割されたぶん、どこで何をしているかを見逃さないよう、目を皿にして舞台を見つめる必要があった。最後列だったから観やすかったけど、最前列のお客さんは見開いた目に汗が入ったりして、苦難を乗り越えながらの観劇になっているんじゃないだろか。それも楽しそうでいいなあ。

男肉のエネルギー量は健在だった

男肉の醍醐味、ダンスは健在で、やっぱりみんなが一生懸命踊っているのを見るだけでいつのまにか心は満たされていた。前の男肉の紹介では「一糸も揃わぬダンス」とか書いてたけど、実はみんなきちんと大学で演劇やダンスを勉強していたりする。その云々を抜きにしても、目の前で汗だくの人たちが踊っていて、たまに客席に飛び込んできたりしたら、否が応でも気持ちは高ぶる。こればかりは実際に見てみないと伝わらないはずだ。だって演者の熱気で室内が暑いんだもの。

今回の見どころは、団長の限界への挑戦

冒頭で団長が踊っていたり、要所要所で登場したり、最後は団長の歌で人を蘇らせたり、今回は団長のやりたいことを目一杯詰め込んだ公演だったような気がする。歌い始めて10秒も絶たずに団長の喉は破壊されてしまったけど、それも含めて「ああ、常に前に進む勇気が大事なんだ」と帰りのバスの中で勝手に感動した。あと「死んだ人を生き返らせる愛」も。千本通りとか二条周辺でしょっちゅう団長を見かけるけど、そんな人が京都にいて良かった。そんな人が大学の先輩で良かった。

メディア芸術祭とかで男肉 du Soleilが何か受賞しますように!もしくは今年のあいちトリエンナーレに招聘されますように!東京公演も舞台の仕込みからちゃんと上手くいきますように!