TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

カメムシは燃やせ、でもクモは益虫だから許す

我が家を10階に構えているのは、何よりも虫を部屋に入れないためだった。それなのにどうしてこの時期にカメムシが家に入り込んでいるのか。壁にぶつかり続けると天文学的確率で壁をすり抜けられるという物理の話を聞いたことがあるが、それが実際に起ったとしか考えられない。しかし、まずは眼の前にいる緑色の怪物をなんとかしなければ、このままではお出かけも昼寝も永遠にできない無限地獄だ。

僕は虫が何よりも苦手で、触ることはもちろん見ることすら遠慮したいぐらい虫に弱い。職場でもきゃあきゃあ言いながら逃げ出し、同僚の女性陣に助けてもらうことが常である。例のGなんぞが現れた日にはきっと発狂して部屋を燃やしかねないだろう。

最近は職場に虫取り網が導入されたおかげで爆弾処理班のような心持ちで虫に対処することができているものの、我が家にそんな先進的アイテムはない。せいぜいゴキジェットとキンチョールくらいだ。もちろん普段これらを使うことはない。あくまで抑止力として保有しているに過ぎず、いわば一人暮らしの保険のようなものだ。だがしかし、この今回は保険に頼ることができない。

カメムシという生態がこの状況をより深刻なものにしている。やつは臭いのだ。僕が必殺の一撃を加えるのと刺し違えるようにして悪臭をばら撒かれてはかなわぬ。高校時代、図書室への渡り廊下を覆うネットに奴らが張り付き、息を止めねば本を借りに行けなかった臭い日々を思い出してしまった。司書のカツシロ先生はお元気でしょうか。

 虫は除去したいが危害は加えられない。自室に虫がいるという現実にしょんぼりしながらとりあえず対処法をひねり出してみる。壁に張り付いたカメムシの足元を紙ですくい、床に落ちたところを再度紙ですくい迅速に窓からリリースする。やってみるとカメムシが紙の上で歩きだしたりひっくり返ったりと大変翻弄されたものの、我が家の災厄はなんとか京都の空に帰っていってくれた。

急いで窓を閉めたあとで空気清浄機を最大風力にして家を出た。アドレナリンのせいでカメムシ臭を感じることはなかったが、親指の爪ほどの大きさしかない虫にここまで翻弄されるとは、虫とはなんと恐ろしいものよ。

これぐらい強くなければ公家にはなれないし京都で生きていくこともできない