TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

早めのパブロンとこってり並にんにくネギ大カタメとこんまり

仕事から帰るバスの中で、己の扁桃腺が腫れてきているのに気がついた。30年も同じ体を使っていると、これがいわゆる風邪のひき始めだとすぐに分かる。そしてこの手の体調不良はさっさと治しておいた方が良いということも知っている。このまま放っておくと扁桃腺肥大に続いて頭痛、発熱と来てボカンである。

その日はポカリスエットとアイスクリームと葛根湯を飲んですぐに寝た。我が家の暖房はエアコンが主力だが、ティファールの蓋を開けたま湯を沸かして湿度も50%以上を確保している。そしてポカリスエットは粉ポカリをスクイズボトルに溶かして作ってあるので寝たままでも飲み放題だ。

次の日は休日だったので布団から引き続きポカリスエットと葛根湯を摂取しつつ、夕方に天下一品でこってり並にんにくネギ大カタメを食べた。風邪のひき始めへの初期対応としてはこれで満点だ。天下一品には滋養強壮の効果があるし、聞くところによると養命酒にもこってりのスープが含まれているらしい。医食同源とはまさにこのことである。

自炊しなさすぎてガスコンロを片付けた我が家でも、粉ポカリとカロリーメイトとビタミン剤ぐらいは備蓄されている。バイクはガソリンが半分になったら給油しているし、キャンプ用のガスボンベも5,6本はある。あとは散弾銃でもあればこんまりが我が家の備蓄を“整理”しに来ても撃退することができるはずだ。ひとまずこんまり撃退RTAの動画でも見て勉強しておこう。

大塚製薬 ポカリスエット パウダー (74g)1L用×25袋

寒さでうめき声をあげながら目を覚まして、6月の長野を思い出す。

12月になってしまった。ああもうどうしようもねえな、という気分になる季節である。寒さで指がかじかんでキーボードを叩くのもぎこちない。外出用のダウンジャケットだって事務所についてからずっと着たままだし、事務仕事をする場所としてここは大丈夫なのだろうか。

自宅の窓ガラスにも断熱シートを張って今年こそ安全な室内環境を勝ち取りたい。昨日は寒さで目が覚めてしまった。カーテンが開いたままだったから冷気がガンガン押し寄せてきていた。

6月の長野の山中でキャンプをしたとき、焚火をしなければ凍え死ぬような寒さの中で眠ったのを思い出した。そこは標高1500メートルのキャンプ場だったので、夜には平気で氷点下になる。朝にはクーラーバッグの水滴が凍っていたし、ペットボトルの水もシャリシャリしていた。星が抜群に綺麗だったからまた行きたい。でもキャンプ需要で混んでいるのは嫌だから、やはり人が減る冬場を狙うことになる。そしてまた寒さに耐えかねてうめき声をあげるのだ。長野の高遠町。良いところである。

今年初めて冬用のスリッパを買った。あのクールな床から解放されることがこれほど快適だとは思いもしなかった。大学時代、部室を素足で歩いて画びょうを踏んだ時は「うおおおお」と叫びながら足裏深くに刺さった画びょうを力強く引き抜いたりもしたものだが、スリッパさえあれば戦国武将が刺さった矢を引き抜くようなムーブもしなくて済む。素晴らしき安全快適な自宅環境。

あとは石油ストーブとその上でシウシウと湯気をあげる鍋さえあれば最高なんだけど、マンションって灯油ダメなのか、もう駄目だ、寒いよう。

 

花畑の写真を撮るために足元の草を踏みつけるような人間になったら私の首を刎ねてくれ

簿記2級の試験が終わった。過去問も教科書も半分ぐらいしか勉強できていないので、きっと点数も半分くらいだろう。次の試験は3月なので、それまでに残りの半分を勉強してリベンジすることにしよう。

少しだけ肩の荷が降りたので試験が終わってからは洗濯物を干したり、バイクに乗ったり、健康診断に行ったりすることができた。相変わらず暮らしのバランス感覚がないから、1つのことにハマると他のことがまるで手につかない。やはり女中さんを雇用することでしか解決できないのではないか。あるいはホテル住まいになるとかだ。とにかく生活することが面倒くさい。

大学の後輩がバイクを買ったというのでツーリングをしてみた。

後輩のバイクはCB400SF、僕のはスーパーカブ110。4倍近い排気量の差はあれど下道を一緒に走るぐらいならどうということはない。簿記の前に普通二輪免許を取ることになりそうだと思いながらサイドミラー越しに後輩のバイクを眺めることになった。

そもそも人と一緒に走るなんて初めてだ。合流してすぐに通話ができるようインカムを買う流れになり財布は一気に燃えたが、これはこれで楽しいしインカムはなかなか便利だ。それに良いショップだったのでツーリングの翌日に再訪してヘルメットも買い替えてしまった。総額でおよそ6万円。バイクは乗っている時よりも降りている時に金が飛んでいく。バイク沼は広くて深い。

「いずれ我々もハゲでデブでとんでもないデザインのライディングジャケットを着るオッサンになるんだろうな」と各々の将来を案じながら、ラーメンとソフトクリームを食べた。

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特に意識していなかったけれど紅葉も見ごろで鮮やかな木々の間を抜けたりそれなりに「映える」スポットを走ることができた。ただ写真は全く撮ってないので解散する間際になって1枚だけ写真を撮っておいた。バイクを入れた風景写真は撮るようになったけれど複数人でツーリングに行ったときに良い感じの写真を撮るのは難しそうだ。

そもそも「映え」ってなんだ。映えのために線路の杭を抜いたり水田に勝手に水を張ったりするような畜生どもと一緒になりたくはない。もしそうなったらためらわずに殺してくれと後輩に頼んでおいた。死体はその場に棄ておくということになった。そうすれば映えを求めてそこに人が訪れることはあるまい。

アレクサ、お前を消す方法を教えて

同僚がスマートスピーカーを買ったらしい。呼べばきちんと電気をつけたりしてくれるが、虚空に呼びかけるのが少し恥ずかしいそうだ。
「うちのチームもみんなが予定をスマートスピーカーに記録したらいちいちホワイトボードに書かずに済みますね〜」と話していたが、朝礼のときに「アレクサ、今日のみんなの予定は?」と呼びかけてアレクサの声をみんなでメモする姿はディストピアだと思った。
スマートスピーカーの前で「アレクサ、おはようございます」と挨拶すれば出勤となり、「アレクサ、お先に失礼します」と挨拶すれば退勤になる。
しかし声が小さいと「それが社会人の挨拶ですか?」と詰めてきて自動的に遅刻にされるし、残業しようとしても「〇〇、お疲れ様でした」と一方的に告げられてタイムカードを切られる。もちろんスマートスピーカーだから消灯も全自動だ。
これが21世紀のモダンタイムスだ。僕らの上司は賢いスピーカー。WEBカメラの向こうではビッグブラザーが見守っているぞ。

帰りに工業簿記の参考書を買うって覚えといてください

『大人になってから勉強することの楽しさを知る』みたいな話を誰でも一度は聞いたことあるだろう。「うわ~昔は嫌いだったのに教科書おもしれ~」みたいなやつだ。あの風潮を見聞きするたびに、みんな本当に勉強が楽しいと思ってんのかと疑わずにはいられない。

なぜなら簿記の試験勉強がまったく楽しくないからだ。結局のところ興味のないことを勉強するのは苦痛でしかないのだ。

簿記の資格だって「3級取れたから今年は2級受けてみるか」ぐらいの気持ちで申し込みしただけだし、練習問題に対して「減価償却を定率法と定額法混ぜてやる奴があるか!」とかキレたりしてるし、工業簿記だって全然やってないし。もうとにかくモチベーションがない。

それに合格したからと言って給料や休暇が倍に増えるわけでもない。じゃあなんで家で勉強してるんだということになる。鳥貴族でハイボール飲んで焼き鳥食べてるほうがはるかに有意義ではないか。

これが自分と全く関係のない分野の勉強だったら利害関係もないから純粋に楽しめるんだろうな。素粒子物理学とか宇宙工学とか勉強してみたいもの。原子を超高速でぶつける実験とかめちゃくちゃ楽しそうだもんな。

今自分を勉強に駆り立てる唯一の要素は、既に4000円の受験料を払ってしまったという事実だけだ。金を払ってしまった以上は合格したいし、そのためにはやはり勉強しなきゃならん。こうなってしまっては今更後には引けないのである。

そしてこういう状態をコンコルド効果、サンクコスト効果と言う。やっぱり自分に関係のない分野の知識を勉強するのは楽しいな。

吉田類お断りの店

 

吉田類という酒を飲むことで名を馳せた男をご存じでしょうか。「酒場詩人」だの「居酒屋探検家」だの呼ばれることもあるこの男は、とにかく飲み屋を巡ることを生業としており、今や「吉田類の酒場放浪記」なる冠番組まで持っている始末であります。彼の主な活動地域は首都圏でありますが、その飲み屋発掘に触発されて今では全国で地域の飲み屋を紹介する多様な書籍やSNSども跳梁跋扈しております。

また「映えぬものに価値はあらず」という現代の消費者にとって、個人店やそこで振る舞われる酒、料理は「映え」という価値を持っており、あるいはそこでしかできない「呑み」という顧客体験の存在に、人は容易く引き寄せられいくようになりました。

かくして承認欲求を満たす正方形の写真とハッシュタグジオタグには七珍万宝の価値があると信じられる時代がやってまいりました。

しかし個人店の店主たちも一枚岩ではありません。新たな顧客を迎えるべく見栄えを整えようとする店もあれば、紹介されているからとずかずかやって来て、写真だけ撮って帰っていくような輩を苦々しく思う店もあるのです。中には新規客が既存の常連客を遠ざける原因にもなるからと、どれだけ人気店であろうとも取材を受けないようなところもございます。

私がおります京都はどこもかしこも観光地であるため、とにかく「映え」による影響が最も大きい場所の一つである。写真を撮るだけでなく建物や挙句舞妓にまで手を出そうとする観光客に辟易とした地元住民が撮影禁止の立て看板を出したり罰金を求めたりと、日夜いたちごっこが繰り広げられている始末です。

飲み屋街の動向も前述と同じように、とにかく「京都」を前面に出してメニューにも店名にも「京」と付ける露骨な店もあれば、観光客など来て“いらんわ"と息をひそめて身内で席を埋める店もございます。「一見さんお断り」なる文化もかつてはありましたが、相手が知らなければその文化は存在していないのと同じでありますので、何も知らずに殺到する一見さんをあしらうのに疲れた店は、自然とその姿を隠すようになっていきました。

提灯や看板を隠した店。店内が見えないよう窓をふさいだ店。VRの世界に逃げた店。井戸の底でじっと息をひそめている店。新しい惑星系への移転を求めた店。高次元存在に昇華した店。多くの店が生き延びるため様々な活路を求め、今やそのほとんどが隠れたのか消えたのかも分からなくなってしまいました。

身を隠しつつもお客は迎えねばならない、そう気づいた店主たちは二律背反の悩みに頭を抱えることになりました。しかし結局はどこかで妥協しなければならないことも彼らは分かっておりました。そうやって生まれ店のスタンスの一つが「吉田類お断りの店」であります。「吉田類の酒場放浪記を見てやってくるような客が一番めんどくせえ」ということに彼らは気が付いたのです。ならばその大元である「吉田類」さえ締め出せばよい。災厄の根幹から逃れることができればこれからも店は平和にやっていける、彼らはやがてそう信じるようになりました。

もしあなたが京都を訪れた観光客で、宿の近くで飲み屋を探すなら決してに関連するあらゆる媒体を参考にしてはいけません。そこで紹介された店の多くはもう存在しないか、存在していたとしても██████だからです。自分のセンスを頼りに、その町とうまく調和している店に飛び込んだほうが、きっと美味しい思いができることでしょう。ただもしあなたがその店の料理や酒を写真に収めて、SNSに投稿しようとするときはどうか気を付けてください。それが██████に察知される恐れがあると店の誰が判断した瞬間、あなたは██████、あるいは██████によって京都での旅を終えることになるからです。どうか良い旅と良い酒に恵まれますように。

 

酒場詩人の美学 (単行本)

酒場詩人の美学 (単行本)

  • 作者:吉田 類
  • 発売日: 2020/08/20
  • メディア: 単行本
 

 

試される大地で甘やかされて勝ち取ったナンバーワンだった<北海道カブツーリング7日目>

<前>

 朝8時頃に起床。疲れていても朝型の生活サイクルは変わらない。風呂に入ろうと廊下に出ると船の揺れで少しふらついてしまった。往路より少し波があるようだが寝てる間は少しも気づかなかった。大浴場の湯船も傾くたびに少しずつ湯が溢れている。

朝食は乗船前に買い込んでおいたセイコーマートで済ませ、ベッドでゴロゴロしてから暇を持て余して再びロビーに出る。もちろん電波はないし、四方は海に囲まれている。何もしなくてもバイクごと京都まで連れて行ってくれるんだから船は便利だ。そしてこういうときに何をするべきか。もちろん飲酒だ。そして北海道の思い出に浸りながら撮った写真を整理したりマップに走ったルートを記したり、旅を終える儀式を済ませていくのだ。

酒とつまみを船内の自販機でパパっと買い。海の見える席でビールを開けた。ただ船が揺れるからか思ったより酔いが早く回り、写真も地図も片付かないまま眠たくなってしまった。舞鶴に上陸するまでまだ9時間以上あるけれど、そこから夜の下道を3時間かけて帰らねばならないので一応その準備もしなければならない。ビールを空にしてからは自室で昼寝をしたりデジカメの写真を眺めたりしながら夜に備えて体力を回復させることにした。

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風景やバイクの写真はもちろんたくさん撮った。ただ個人的にはその土地の暮らしや日常の匂いがする写真のほうが好きだ。

時間が経つとどこで撮ったのかも分からなくなってしまう写真たちばかりだけれど、それでもこれらは確かに存在したという記録にはなる。そういう奇妙な記録のためにバイクに荷物を縛り付けてあちこちを走る回るのは、なかなかどうして楽しいものだ。

さて次はどこに行ってみようかしらね。

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<おわり>