TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

私の強みは自撮力です

マズローの欲求階層説の頂点は自己実現で、確かその下に自己承認があったはずだ。しかしマズローの名前よりも自己承認の存在を知る方が早い世の中になった。

梅田・中崎町の喫茶店。目の前の2人の女性は席につくなりお互いが片方の手にドリンクを、もう片方の手にはスマホを持ち、各々で自撮りと物撮りに没頭している。測っていたわけではないが、かれこれ10分以上は撮影を続けていたように思う。よくもそこまでいろいろなアングルで撮影ができるなと感心して見ていた。

ドリンクは机の上に置くだけでなく、窓の縁に置いたり、店のフライヤーを見切れさせたり、店内を背景に入れたり、慣れた手つきでを撮影し続けていた。ドリンクの物撮りが終わると次は自撮りだ。最初こそ2人揃って撮っていたが、それ以外は客もまばらな店内を自由に使いながら、差し込む光の角度も緻密に計算しながら丁寧に撮影を続けていた。鏡で見る自分と写真で見る自分は違うものだが、おそらく写真で見る自分を熟知した上で撮影をしているのだろう。

そうこうして撮影が終わると、2人はお互い口を聞くことなく一心不乱にスマホを操っている。ベストショットを選び、それを満足行くレベルまで編集しているのだろう。コントラストだの露出だの彩度だの、専門誌でしか見ないような用語も、InstagramTwitterでは操れる仕様になっている。そして完璧に仕上がったは速やかにSNSにアップされるのだ。

満足の行く写真が撮れるまで諦めない粘り強さ、自分をどのように見せれば一番良く映るか理解している客観的視点、完成したプロダクトを速やかにローンチして効果を最大化させるスピード感。ここだけ見れば結構仕事できる奴のようだ。ただ友達と喫茶店に入っても口も聞かずにずっとスマホを睨んでいる様は、余暇を満喫しているというより職人の仕事を見せつけられているようで、少し威圧的に見える。