TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

暮らしが根ざしていくまえに

3年前、京都に引っ越してきた時は、「この街には僕を知る人は誰も居ないのだ」という事実が心をくすぐった。旅先で曲がり角の先を空想しながら街を歩く楽しさが毎日のように続いていた。知らない場所、知らない店、知らない人、知らない味。好奇心と体力に任せて自転車で京都を駆け巡る日々。1年目の冬くらいまでそれが続いていたので、多分200日くらいは京都を楽しんでいたと思う。

それが今になれば、街角に立てば誰かしらに知り合いに出会うし、京都への関心もまったくない。祇園祭だって「ああ人が多いし市バスが遅い」ぐらいの印象しかない。正直今の家から半径500メートルさえあれば、何も困ることはない。意識の高い人は、チャリティマラソンとか知り合いの開いた個展とかホットヨガとかに行って自分を磨くんだろうか。

僕がこの文章を書くにあたって、僕がどこから来たとか、そんなくだんないことからを話さなくちゃいけないわけでもないけど、ただ一つ言えることは、僕は京都に来たけど、いずれは京都から去って行くんじゃないかってことだ。別に何者かになりたいってわけじゃない。でも今の自分には満足していない。だから暮らしが根ざして動けなくなる前に、ここを去っていくべきなんじゃないかって思うんだ。

ライ麦畑でつかまえてってこんな話だったっけ。ホールデン・コールフィールドツイッターとかワードプレスを手に入れたら何を書くだろう。でも思春期を加速させることは確実だろうな。