TANNYMOTORS

人の味を知った熊は再び人里に降りてくる。

一切準備せずに万博に行ったレポ

「万博始まったらしいですねえ」は関西人の季節の挨拶である。だが「行ってきましたよ」の声を聞かないまま、梅雨が近づいていた。今年の梅雨は例年より早めに来るらしい。そしてゴールデンウィークを1カ月後ろ倒しにした結果、ツーリング旅行に出かけても途中で雨に降られることがわかった。

しょうがない。行くか、万博。
平日に行くからそんなに混んでないだろう、知らんけど。

準備編

twitterを眺めながらアプリを入れてチケットを買う。9時から入場できるらしいけど私が予約したタイミングでは11時入場が最速だった。アプリでパビリオンの予約もできるらしいけれど前日に空きがあるわけもなかった。あと夢洲駅ってどこにあるんだ、ああ中央線が延線したのか、じゃあ乗換2回ぐらいで行けるぞ。思ったより万博は身近だった。

「会場内はキャッシュレスが基本!」と書き込みがあったのでスマホsuicaに5000円だけ入れてその日は就寝。遠足の前日だ、11時には眠るぜ。

当日編

11時入りだから行列を見越して10時過ぎに到着するよう出発。往路は夢洲駅の東ゲートから入る。中央線に乗り換えると「万博行くぞ行くぞ行くぞ」というオーラを放つ人々が沢山いる。しかもみんな楽しそう。そうなか...万博は楽しいのか...楽しめると良いな...夢洲駅はデカいな...まあ万博だから当然か…スマホQRコードをかざして会場内に静かに入る。

おお、デカい、それに建物も人もがいっぱいだ。ベンチもあるぞ。バカみたいな感想しか出てこないぞ。平日だから小中学校の団体も多い。しかも何校もいるから各校が帽子を揃えたり養生テープに名前を書いたりして識別できるようにしている。お手製IFFだな。

大屋根リングはよくもまあこんなもん作れたなと素直に驚いた。それに柱に番号が振ってあるので現在地を確かめるのにすごく便利だった。ちょっと競馬場みたいだ。ちなみに53柱はアイルランド館の正面である。じゃあアイルランドダービーだな。

会場内をぶらぶらしているだけでも結構楽しい。自動運転のロボットにミャクミャク様が箱乗りして走り回っていた。しかも私の目の前で静止して動く気配がない。ロボット優先エリアなのかよ、と思い道を空けるとミャクミャク号はゆっくり蛇行しながら会場内を進んでいった。後ろのメーカーさんいわく今回は人の前で止まる設定らしい。じゃあ人がいても無視して突っ込めるってことか。ディオかよ。

お昼になれば会場内の気温も上がってきたが、野外イベント装備で来ているので遮光、防眩は完璧。それに大屋根リングの下は風が通り抜けるので休憩場所としてちょうどよかった。無料の給水スポットもちらほらあるが、案外並んでいるのでそこは自販機に逃げた。こういうとき大人は金で解決するのだ。

そしていよいよパビリオンに入る。何を展示してるかは知らんが…いやほんとに何を展示してるんだろう。

まずフランス館、初手でロダンだ。下に名前も彫ってある。わりと可愛い文字だな。そこからルイヴィトンやらディオールと続いて「うちは美の国やさかい!」という圧を感じる。そうか、お国自慢だもんな。じゃあイタリアはどうなる、噂だけは聞いてるぞ?

ファルネーゼのアトラス!ローマ時代の彫刻が!保護ガラスもなく眼の前にある!

ミケランジェロ!手が届きそうだよ!造影がすげえや!これBlender使って…手!?ワンオフってことかい!?

おいいいい近すぎるでしょうがああああ!!!普段ローマとナポリぐらい離れてる2人が異国の地で同じ部屋にいるよ!!!何も起きないはずがなくだよ!!!

すげえよイタリア、マジで芸術の覇権国家だよ。ふわっとした意識高い感じの展示してる国もある中で「現物」で殴ってくる姿、すごく良いと思うな。おかげで銀魂腐女子みたいなリアクションしちゃった。パビリオンの入口でイタリアン用の野菜畑作ってたのはビックリしたけどやっぱりミルコ・デムーロの母国はすごいよ。そういや部屋の隅にダ・ヴィンチ直筆の設計図も置いてあったよ。めっちゃ字が細かったね。

パビリオンもいいけど建物だけ見てもかなり楽しい。ポルトガル館は膨大な数のロープを垂らしてその間で演奏してる二人組がいた。しかも演奏場所が2階だから下からは見えない謎ステージ。

スペイン館のオモシロ階段。登るのとあわせて陽も昇るように見えて良き。集合写真専用階段みたい。

そして中央アジアの独裁国トルクメニスタン。予想外の行列で諦めてしまったものの、見学した人は全員洗脳セルダル・ベルディムハメドゥフ大統領閣下の偉大な功績を讃えているらしい。あと馬と犬も推してるらしい。

帰宅編

11時に現地入りして夜8時頃までいるとさすがに眠い。往路の東ゲートから帰ろうとしても地下鉄駅から溢れるのは目に見えていたので今回は西ゲートから出て桜島駅行きのシャトルバスに乗ることにした。かき集めたバスで帰宅者をピストン輸送しているのはなかなかのインパクトで待ち列がどんどんバスに吸い込まれていった。そして桜島駅から大阪駅へ向かい、1度乗り換えて11時前に帰宅。特に行列や待ち時間が発生することもなくスムーズな帰路だった。なるほど、これが万博だったのか。

感想戦

まずパビリオンを予約できるならしたほうが良い。楽しそうだなーと思ったパビリオンが予約制だった時はちょっとがっかりした。これは全て自分が悪い。

食べ物は当然値が張るけれど、海外の料理を体験するつもりなら食べて損はないらしい。逆に気にしない勢は持ち込むか敷地内のコンビニで買えば十分。

あれば良かったものとして、唯一持って行かなかった椅子があると完璧だった。イベントによっては三脚や椅子禁止のところもあるから無意識のうちに外していたけど、行列に並ぶにしてもその辺でのんびりするにしてもあったら便利に違いない。


スタンプ用の手帳はオフィシャルグッズにもあるけど測量野帳が完璧に対応していて使いやすかった。旅先でスタンプ集める癖のある奇人は全員測量野帳を持ったほうが良い。

何も準備せずにこれだけ楽しめたのだから、もう1回くらいきちんと準備していってもいいかもしれない、と思うぐらい楽しかった。タイパとかコスパとかアホみたいな物差しを全て吹き飛ばす面白さがあった。
なぜか未完成のパビリオンもあったし、ナウルのブースが充実している可能性もある。全てのイベントが集中している東京民に負けたくない対抗心で万博を謳歌してもいいかもしれない。
それと「万博に行った人」になるのは案外気分が良いものだし、世界にはいろんな国があると実感できたのはとても良い経験だった。コスプレだってしたらいいじゃない。

なお大阪万博でどうしてもやりたかったこと

太陽の塔ガンダムだよ~、ガンダム太陽の塔だよ~