TANNYMOTORS

一度人を食らった熊は、その味が忘れられず再び人里に降りてくるという。つまりバイクの日記です。

僕らが狂っていた11月の日々には今でも解けない謎が残されている

11月になると決まって大学祭のことを思い出す。開催日とその前後にかけて大学に泊まり込んで馬鹿みたいな裏方仕事に勤しんでいた。懐かしくはあるが「終わってみればいい思い出だねー」と美化する気にはならない。あの日々はただの狂気であったし、オーバーワークとワーカーホリックを大学時代に味わうための方便でしかなかった。

あるときは本番前日から36時間ホールに篭って開会式どころか1日目が終わるまでタイムスリップをした、あるときは深夜3時に廊下でブルーシートに包まって寝た、あるときは銭湯で足を滑らせて湯船に腹打ちをした、あるときはゆで卵に落書きをして後輩を泣かせた。ろくでもないエピソードには一生事欠かないだろう。

とはいえ得たものがなかったわけではない。舞台図面を書くための2次元CADや、ミスコン候補者をアレするためのフォトショップも覚えた。段取りやタイムスケジュールを切ることも、ヤバそうな現場に人を送ることも、怒られずに結果さえだしとけば大丈夫ということも学んだ。

しかし我流で学んだことを突き詰めても大抵はどこにも行けずに適当にくすぶってしまう。だからそれはそれとして適当に就活のエピソードにでも換えてしまうしかない。それと残念ながら大学祭にマジックはない。あるのは熱に浮かされたバカが産んだ蜃気楼だけである。

でも何もせずに日々を送るよりは、キレながら修羅場で暴れたほうがいくらかマシだったし、あの日々はおそらく、いい思い出ではなくとも、きっと無駄ではなかったと今でも信じている。

明日から11月、今でもあの空間で自分が経験したような修羅場に飲み込まれる奴らがいると思うとちょっと胸焼けがする。