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人の味を知った熊は再び人里に降りてくる。

本州だか本土最西端到達するぞ|西九州塗りつぶしツーリング0~1日目

日本には四季があるのとおなじく、本土四極というものがある。ようは本土の端のことだ。

北は北海道稚内市宗谷岬、東は北海道根室市納沙布岬、南は鹿児島県南大隅町佐多岬、そして西は長崎県佐世保市神崎鼻がそれぞれの”極”を担っている。だから何だという話だが、バイクに乗っていると必然的に馬鹿になるので岬とか端とか聞くと「行かなきゃ!」という気持ちになる。だって馬鹿だから。

だから行きます、九州。あとひとりになりたいんで。

CBR400Rはスクリーンに行き先札を入れられるメリットを本紙はこれまでお伝えしてきたが、今回も無事さんふらわあの大分行き札を入れることができた。なお新造船の別府便はメンテナンスのためお休み。ポートアイランドから乗るのも楽しいね。

乗船直後の3甲板、旅族のバイクおぢが集結しているぞ。

フェリーの過ごし方は人それぞれだけれど、初手はやっぱりお風呂がオススメ。一番風呂は良いもんです。それに初手風呂勢は自分を含めて食事前だから回転が早い。コスメバッグを抱えたトラック野郎と一緒に入る風呂はたまらねえぜ。

フェリーごはんの中で一番好きなさんふらわあのバイキング。

まんが日本昔ばなし盛りのご飯と並んでいる全種類のおかずを頂いて昇天…ドカ食い気絶…?知らないなあ…この後にカレーとデザートも食べます。食とエンタメが唯一両立するのがフェリーのバイキングだ。

いつものプライベートベッド。消灯後は少しカーテンを開けると息苦しさも和らぐぞ。そもそも気絶してるから気にならないぞ。

翌朝、ツーリング1日目。

接近していた台風と入れ替わるように九州に上陸すると居残った雨雲が小雨を振りまいている。前日に白米1.5合とおかず3皿を食べてたくせに胃袋が「朝食食べなきゃ力が出ないよ!」と教えてくれたので大分市内の「資さんうどん」に行く。バイクは胃袋も馬鹿にしてしまう。

肉ごぼ天うどん760円。

甘めのつゆに歯ごたえのあるごぼ天と肉がよく絡む。そしてやわらかめの麺で食べやすさも抜群。ちなみに九州ローカルだった「資さんうどん」も関西進出を果たして大阪や尼崎で食べることができる。だからどうした。俺は九州で「資さんうどん」が食べたかったんだ。

よし最西端の佐世保に向かおう。大分から九州を横断して佐世保に向かうわけだから、当然のように熊本の阿蘇も経由して贅沢に向かおうじゃないか。九州をツーリングするんだ、阿蘇に行かない手はないよ!

ダメです。雨が止みません。

湯布院も長者原も大観望も雨で何も見えないのであきらめて熊本から高速に乗って佐世保に向かいます。熊本インター手前でヒライのお弁当を買ってパーキングで食べるまで無心で走ってました。ちくわにポテトサラダを詰めて揚げた「ちくわサラダ」が美味しい。

なんやかんやあって本土最西端到達!

フナムシが見えて即逃げたので滞在時間は10分。京都を出発して30時間かけて来た結果がこれです。宗谷岬佐多岬より満足度は低いかもしれない、何ならモニュメントの向かいの島は橋でつながってる。じゃあここは何の端なんだ…?

とにかくやることはやったので佐世保港が見える弓張岳展望台へ行く。


遠くにも入り組んだ海岸線が見えてとても良い眺めだ。

でかい船がいっぱいだ!かっこいい!

ぼくは船に詳しいんだ!あれは戦艦と空母だ!

あれは空母じゃない!強襲揚陸艦だ!それと桟橋は日米共用なんだね。

まあまあいい時間になってきたので宿を取った長崎市に向かいます。高速乗り放題に申し込んでるから今回は惜しまずに高速移動だ。しかし到着は日没後の予定。なので夜景がすごいと聞いた稲佐山展望台に登る。長崎は佐世保より起伏が激しくてカブだったら2速でさえ危ないかもしれない。でも展望台の目の前までバイクで登れるのはめちゃくちゃ楽だ。

わぁーこいつはすげえや

世界新三大夜景の1つが長崎らしい。インバウンドとカップルと家族連れがいっぱいだ。こういう時「誰が決めてんだよ、残り2か所どこだよ」と斜に構える態度と「バリ映えてて草」と褒める素直な態度が同時に出ちゃうよ。でもこの景色が見られるならみんな来るし写真も撮るわ。

その後長崎市内のファーストキャビンに泊まって西九州塗りつぶしツーリング1日目が終了。バイクの置ける宿を探すのが手間だったけどファーストキャビンははす向かいに大型も置けるバイク置き場があるし周りは飲み屋街だしすじポンは山盛りだし超オススメ。

バイクの写真これしか撮ってねえ!それでもこれで十分カッコいいぞ!

西九州の塗りつぶしは終わったが、ツーリングはまだ終わらないぞ。なにせ家に帰りたくないからな。

<つづき>

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門別競馬の鹿は撃ち抜けない

<前回のはなし>

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秋、遅い盆休みに敢行した東北縦断征夷大将軍ツーリングの最終日を、僕は北海道で迎えていた。名古屋から仙台に上陸し、東北のツーリングスポットである蔵王や磐梯吾妻を駆け抜け、青森から函館に上陸してラッキーピエロを食べ、あとは小樽から舞鶴行きのフェリーに乗るだけだった。

フェリーの出発は23時と遅いので、自由時間は存分にあった。札幌でHTB旧本社跡やモエレ沼公園に行ってもいいし、千歳で飛行機を眺めるのもアリだなあと思いながら函館を北上していると、青看板に「苫小牧」の文字が見えた。

初めてバイクを買って、その年に北海道をツーリングして、そして苫小牧で入った銭湯がバカみたいに熱かったことを急に思い出した。あの時は番台の女将さんに「湯船熱いからガンガン水入れてね!」と言われたものの、先客のお爺さんに気後れして我慢しながら湯に浸かったのだ。そしてお爺さんから「日高の方は馬の牧場が多いんだけど、鹿が牧場の中に入り込むんだよね。猟銃で馬なんて撃ったらエライことだからさ、鹿にとっちゃ馬の近くが安全地帯なわけだよ。ところで水入れていい?」なんて北海道トークを聞かされたんだった。

あの時は「水入れながら話してくれよ」としか思わなかったが、今の自分は迷わず馬に会うことを選んだ。待ってろお馬さん。乗馬体験とかエサやりとか出来たらいいな~楽しみ~。

そして選ばれたのは「ノーザンホースパーク」でした。馬も居るし、レストランもきれいだし、テーマパークっぽいし、土砂降りの中3時間走ったことを除けばもう完璧だった。ツーリング初日にワークマンに寄った自分をここで存分に労うことにする。ツーリングの記録は諦めた。

敷地内の厩舎ではG1馬や乗馬で活躍している馬たちを自由に見せてもらえる。厩務員さんに体を洗ってもらってる馬も、食事をしている馬も、ゴロゴロしている馬も見放題だった。もう全部が可愛い。

馬によっては撫でさせてくれるし、「この辺掻いてくれや」と自分からやってくる馬もいる。鼻はゴムボールみたいにブニブニしていて、いくらでも触っていたくなる。頭も良くて可愛いくて馬力もあるなんて完璧動物じゃないか。どんどん心が満たされていくぞ。

そして乗馬体験の話を受付で聞いてみると、どうやら体重80キロ未満の人は体験可能とのことだった。まあみんな元競走馬で華奢だし、僕はツーリング中ほぼ毎日山岡屋食べてたから、なんというか、まあ、うん。あ、馬車もあるんですね。でも今日は雨だからやってないと。そうですか。あ、ポニーショーは見られるんですね。ありがとうございます。

さて、苫小牧の銭湯で出会ったお爺さんは牧場の他に競馬場があるとも言っていた。調べると見事に門別競馬が開催期間中で、しかもここから1時間以内の距離。もう行くしかない。このツーリングの最終目的地は門別競馬場だ。

北海道は時速60キロで1時間走ると60キロメートル進むことのできる算数のたかしくんみたいな道が大半なので、45キロメートル先の競馬場には45分で到着。バイク置き場に誘導されると受付のおばちゃんが僕のバイクまでやってきてスタンドの下に鉄板を差し込んでくれた。北海道のアスファルトは柔らかくてバイクスタンドがめり込むと聞いていたけれど、それを優しさでカバーしてくるとは思いもしなかった。しかも入場料は無料だという。園田でさえ100円払うのに!?これだけで実質勝ちじゃないか。

門別競馬場はさすが北海道と言うべきか、コースは結構大きくて直線は300mぐらいあるという。その割に建物やパドックはこじんまりとしていて、馬券が買える建物は2棟あるが、大きい方の建物でも体育館程度の広さだった。そもそも大半の人が馬券をネットで買う時代だから、現地の人の数なんて関係ないのかもしれない。

客層も競馬好きというより地元の人たちが集まっている感じで、ゴール前で大盛り上がりしてるグループが家族と来てる馬主さんだったりと、競馬場とは思えないぐらい和気あいあいとした雰囲気だった。園田の殺伐さや、大井のキラキラ感とは違う豊かさがあり、どの競馬場よりものんびり過ごすことができた。

ちなみに馬券は全滅だった。夕飯代を巻き上げるつもりが一方的に北海道の畜産に貢献してしまった。この出費は旅費に混ぜておけば大丈夫だろう。乗馬体験もしてないわけだし。

帰り際、バイク置き場のおばちゃんに「今日の分は、来年、取返しに来ますんで!ありがとうございます!」と負け惜しみを吐いて小樽へ向かった。そして外れた馬券と山岡屋のサービス券をスクラップブックに貼って、今日もnetkeibaを眺めている。でも馬券を買うのは馬体重と返し馬を見てからだ。

園田と同じ地方競馬とは思えないぐらい快適で綺麗で差し馬が決まる大井競馬

<前回のはなし>

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夏、超てんちゃんの展示とMIKAPIKAZOの個展を見に東京へ行った。そのついでにデイリーポータルZの記事を参考に旨いチャーハンを食べ歩き、当然のように地方競馬の一つである大井競馬場に行くことにした。


MIKAPIKAZOは元気な色使いが良い

超てんちゃんはガチでいた。

見るべきものは初手でガッツリ見たので、残りは大井競馬である。競馬場を訪れる前日に立ち寄った後楽園の場外馬券売り場もそこそこ荒んでいたので「馬狂いなんて東京も大阪も変わんねえや」と思っていた。


競馬を見てるようで見てないこの感じ。”果て”って感じがする。

あらかじめ大井競馬のYoutubeは見ていたので「東京シティ競馬」を自称するCMに「『東京』を『トーキョー』にして右上がり手書き文字にしたらさぞオシャレでしょうなあ!」と野次ったり、全レースゲスト付きの中継やファンファーレを生演奏する豪華さにビビったりしていたが、結局のところ大井競馬だって地方競馬の一つに過ぎないだろうと思っていた。が、これはとんでもない間違いだった。大井競馬場中央競馬を超えるくらいキラキラしていた。

まず最寄り駅までの車内に競馬新聞を広げるオッサンがいない。おかげで降りる駅が分からずモノレールを乗り過ごしてしまった。そして場内に入るとナイター開催なのにどこも明るく、建物も飲食店も全て綺麗で、ガタガタのパイプ椅子やビールケースとコンパネで作る即席テーブルは一つもない。

スタンド席のある建物は2棟もあり、どちらにもエスカレーターとwifiが備わっている。なんと豪華な競馬場だろう。園田にはエスカレーターなんてないぞ。こんなのリニューアルしたての京都競馬場と同じじゃないか。

この週は重賞のサンタアニタトロフィーが開催されるのにあわせてアメリカ料理のキッチンカーやハーレーダビッドソンのブースも出店していて、おまけに武豊デムーロトークショーまでやっていた。平日開催とは思えないくらい、むしろ平場の中央競馬より賑わっていた。園田競馬と同じところはマークカードの書式と上空に飛行機が飛んでいることぐらいだった。

コースも近くてレースが見やすい。このとき見たオペラの差しが最高にかっこよかった。

そして建物から出ずにパドックまで見られる。人を駄目にするレベルの快適さである。

肝心の馬券は何一つ当たらなかったので、途中からはベンチでビールを飲みながらダラダラ過ごしていた。罵声が聞こえない競馬場はなんと過ごしやすいことだろう。時間が遅くなるにつれて仕事帰りの人たちが増えていくので、中央競馬や園田とは少し客層が違うような気がした。もしかするとレジャーとしての競馬というイメージが大井にはあるのかもしれない。そしてここはギャンカスの掃き溜めではないのだ。

この日から数ヶ月後にはミックファイアがJRAの馬を破って三冠馬になったり、JBCスプリントではイグナイターが兵庫勢初の日本一になったりして、中央競馬とは違う面白さを地方競馬から感じるようになっていた。とりあえずSPAT4には登録したぞ。

ちなみに東京チャーハン紀行は、荻窪にある中華徳大のチャーハンが腰を抜かすほど美味しかった。荻窪のカプセルホテルを定宿にしてるので再訪必至である。食べられなかった江ノ島くんが気の毒でしょうがない。

 

馬が見えなくても、野次がうるさくても、応援したくなるのが園田競馬

<前回のはなし>

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自宅にはソダシのぬいぐるみ置き、即パットにもUMACAにも登録し、すっかりにわか競馬ファンになった6月の終わり頃、見事に宝塚記念を外して「しばらく競馬とは距離を置こう」と落ち込んでいたら夏がやってきた。

中央競馬は函館や福島などで開催されるようになり、わざわざウインズに行かなくてもネット中継を見ながら馬券が買えるようになったとはいえ、やはり競馬は現地で見るのが一番楽しい。

おまけに僕は土日休みと平日休みが入り混じった働き方をしているため、平日に開催している競馬場で遊ぶこともできる。ならば地方競馬に行くしかないじゃない。

関西には「園田競馬」というウインズとは比べ物にならないくらい荒れたオッサンたちが集う競馬場がある。そしてアクセスは阪急園田駅から無料バスで5分だという。京都から見ると阪神競馬場より近くてびっくりした。そんなところに競馬場なんてあっただろうか。しかし開催日の十三駅には競馬新聞を持ったオッサンがちらほらおり、みんな園田駅で降りて行ったのでそれについていくと無事園田競馬場にたどり着くことができた。

なんというべきか、園田競馬場はものすごくローカルでカオスな施設だった。

入場には100円が必要なのは阪神競馬場と同じだが、ここの場合は100円玉をゲートに入れるゲームセンターのようなスタイルだった。またスタンド席以外は限りなく平らで、パドックでは馬との距離がものすごく近い。

そしてその周りにはフードコートのような感じで飲食店が並んでおり、小さな居酒屋が入っている長屋のような場所から小走りで馬券を買いに走るオッサンをときおり見かけた。最初は食い逃げではないかと思ったが、レースは店内のモニターで見るらしくオッサンは馬券を片手に毎回戻ってきていた。真似てみるとちょっと楽しい。

園田競馬場のコースはダートのみで、芝や障害といったコースはない。レース距離はスターターの位置を変えて調節をするらしく。また定期的にトラクターがトンボをかけて足跡を消していた。ダートコースと聞いて茶色の土のコースを思い浮かたけれど、園田のコースは白っぽく、遠目に見れば砂のような感じがした。

そしてレースになると馬が白い砂塵を巻き上げるのでレース中にどの馬がどこにいるのか時折分からなくなって大変困った。最善列だろうと場内のモニターだろうと同じようなものだったので、最終的にはサングラスをかけてスタンド最上段から見るスタイルに落ち着いた。

オッサンたちは良く食べ、良く飲み、良く喚いていた。

失速した馬がいれば「ヴォケェ!!」「シネェ!!」「カスゥ!!」といった野次は当たり前で、たまに「KOROSU=ZO」の怨嗟も聞こえてきた。喫煙所で馴れ馴れしく「今日▲■★?」と早口で絡んで来るオタクもいた。最終レースの時間帯にはスペシャルウィークのコスプレをした男性がゴール前を闊歩していた。場末には場末なりの寂れ方があるだろうけれど、ここはサラダのボウルをひっくり返して何度か踏みしめたようなカオスな場所だった。

それでも馬は一生懸命走っている。メインレースともなれば観客だってそれなりに応援もする。この日のメインレースだった重賞「摂津杯」では、故障からの復帰戦であるツムタイザンが優勝を決めて、みんなから拍手と声援を贈られていた。みんな暴言以外も言えるとは予想外だ。ともあれ、こういうドラマがあるのも競馬の良いところだ。

競馬場の苦手な部分を煮詰めたのが園田競馬だけど、それと同じぐらい園田競馬を好きになる要素が転がっていた。夏には東京に行く機会があるから、試しに東京の競馬場でも見てみようかと思いながら部位の分からないホルモン串を食べ、ビールを飲み干し、4角に向かって大きな声で「そのままァ!!!」と叫んだ。園田競馬は小さい競馬場だから直線が短いけれど、かといって刺されては困るのだ。

ヨーロッパ企画「切り裂かないけど攫いはするジャック」そして誰もがジャックになった

今年もヨーロッパ企画の新作公演を観るため栗東のさきらにやってきた。

今回はジャックが人を攫うミステリーのお芝居だ。大風呂敷を限界まで広げて何度も劇場をコメディで覆いつくしてきた上田誠に果たしてミステリーを書く素養があるのか、そして解決まで描ききることができるのか、なによりコメディしか観ていない僕たちは謎解きを理解することができるのか。いつもと違う緊張感につつまれながらジャックが現れるを待っていた。

観劇後

ジャックはガンガン人を攫っていた。人々が懸命に推理に挑みながらもその裏でジャックは一人、また一人と攫い続けていた。フォレストガンプベトナム戦争で味方を助けるときみたいな攫い方だった。まさに人攫いの王道。「邪魔しないように道を空けてあげなきゃ」と思っちゃうぐらいの攫い方。足元が危なかったら「段差ありますよ」と教えてあげたくなるくらいの攫い方だった。

あんなにポンポン攫うなら新聞がジャックネタを擦り続けるのも当然で、「とりあえずジャックで1ページ埋めといて」みたいに雑に仕事振られそうだし、リーフのようなお出かけ雑誌に編集部員が飛び出し坊やのポーズで切り抜かれて登場するくらいジャックが安パイになってしまっている。

新規IPにはグッズ展開だって必要だ。ジャッククリアファイル、ジャックアクスタ、ジャック缶バッヂ、ジャックスマホケース、ジャックTシャツ、ジャックのラインスタンプが発売され、ジャックがソシャゲとコラボしてキャラ設定がメチャクチャになることだってあるだろう。そしてカップヌードルのCMに起用してもらえたら一人前のコンテンツだ。

そう、ジャックはコンテンツなのだ。みんないつも「次は誰を攫うのか」と期待し、攫われた翌日は「どんな攫い方だったのか」を推理する。そうやってジャックはいつの間にかキャラクターとして認知され、サンリオキャラクター大賞にエントリーし、人攫いの起きた現場はTikTokを取る若者で溢れ、いつの間にかジャック界隈として認知され、海外では歪んだネットミームになり、Youtubeのゆっくり解説動画にされていく。

そして半年もすれば誰もジャックの話をしなくなる。そのころには新しいジャックが出てきているはずだからだ。大食い系ジャックとか、料理系ジャックとか動物飼育系ジャックとか。そして最後にマツコ・デラックスが「ジャックだけでこんなにいんの!?」とコメントして、ようやくブームが下火になっていく。

そして月日は流れ、かつて人攫いジャックが跋扈していた街は今どうなっているのか。廃墟系ジャックがその街を訪れてみると……

感想

物語としてはミステリーとコメディが両方楽しめて大満足だった。藤谷さんはメチャクチャセリフが多いし、金丸君は主人公力があるし、中川さんは早々に登場してきて出番も沢山あったし、岡嶋さんはすごく声がでかい。トークやシチュエーションで笑うよりも、演者の動きが多くて見ていてとても楽しい。ミステリーはみんな頭の中で考えたり、その場で話したりするだけなのではと心配していたが、名探偵コナンに負けず劣らずみんな現場を走り回っていた。きちんと演者が客席に語り掛けるし、なんだかお芝居を見ているようだった。

ミステリーだからネタバレになるようなことは特に避けなきゃいけないけれど、一つだけヒントを伝えられるなら、「手掛かりは必ず現場にある」ということだろうか。

みんなは誰がジャックか分かるかな?さあ早く見に行こう。見に行かない子のところにはジャックが来るぞ!!!

 

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4角のむこうから馬たちの足音がやってくる阪神競馬場

<前回のはなし>

4角とは競馬場における最終コーナーのことである。「よんかく」と読みそこからゴールまでの距離は競馬場によって様々だが、阪神競馬場の場合、470mから350mぐらいの直線がゴールまで続いている。

初めての競馬から数カ月がたち、ついに阪神競馬場でもレースが開催される季節になった。何事もライブ感が大事だと信じているものとして、やはり現地で競馬を見ようと阪急の仁川に向かった。仁川駅から競馬場までは直結しているし警備員がそこかしこに立っているので迷う心配はない。何なら競馬新聞を装備しているおじさんの後ろを歩けば梅田のダンジョンからでもたどり着けると思う。

競馬場に入るには入場券が必要だが、事前にネットで購入したQRコードを入口でかざせばスムーズに入場できる。なんだかUSJみたいだ。あと入口がめちゃくちゃでかい。

入場してすぐにパドックがあったのでとりあえず馬を見る。やはり馬は大変かわいい。足音は本当に”パカパカ”と聞こえるし、たまにブルブル鳴いたり馬を引いている人に甘えたりしているのがまた良い。そのかわいさとは裏腹に足回りには筋肉がぎっしり詰まっていて、蹴られたらひとたまりもなさそうだ。

パドックの周りには次の競争の行く末を見極めんとするおじさんや肩車されたちびっ子たちが集まってじっと馬を眺めていた。ちらほら白レンズを担いだ人たちもいて、どうやら馬の写真を撮りに来ているらしかった。この時まで馬写真の界隈があるなんて想像もしていなくて結構驚いた。あと大学生のグループが楽しそうにしてて京都のウインズの殺伐さと対極にいるみたいでこれも以外な光景だった。競馬場って結構楽しいところかもしれない。

パドックを歩いていた馬たちが騎手を乗せてコースに向かうとパドックの人たちも一斉にコースに向かったのでその後に続いてコースの前に移動する。その時ようやく気付いたが、競馬場ってものすごく大きいのだ。スタンド席は幅が200mくらいあるし、高さも6階ぐらいまである。この日は大きなレースの無い日だったので空いていたが、GⅠとか有名なレースの開催日になるとここが満員になるという。もうフェスじゃないか。馬フェス。

ぼけっとしながら綺麗な芝生やデカい建物を眺めているとレースが始まった。数百メートル先から馬の集団がやってくる。パドックのパカパカとした足音とは違い、蹄が地面を叩く鈍い音が一つの塊になって目の前まで迫ってくる。蹄の音とは対照的に馬上の騎手は静かに馬の背に身を預けている。速度は目視で時速50kmぐらいだと思う。原付程度と考えれば普通の速さだけれど、10数頭の馬の群れが突っ込んでくるとなると凄い迫力だ。

馬たちはそのまま目の前を通り過ぎてコースの向こう側へ進んでいく。だんだんと馬の集団が縦長の形になり、数頭ずつの集団になっていく。馬の後ろにいれば風除けやペースメーカーになりそうだから、自転車レースと同じような戦略や作戦が競馬にもあるのかもしれない。

そして最後のコーナー「4角」を回って再び馬たちがやってくる。ここで先頭を取った馬が勝ち馬になる。ばらけていた馬たちが再び1つの大きな集団になり1着でゴールしようと懸命に走っている。ウインズのように応援する声やツッコミも次第に大きくなる。騎手は鞭を打ったり手綱を揺さぶったりして馬を先頭に押し出そうともがいている。いろいろな光景の中で、馬の足音が特に良く聞こえた。蹄が地面をえぐるような”ドドド”という音は、生まれて初めて聞いた音だった。

どの馬が1着なのかは正直コースの最前列だと良く分からない。順位を知りたければスタンドのすこし後ろか、大きなモニターの前で見ていた方がいい。でもあの迫力は最前列にしがみつかなきゃ決して分からなかった。

それから再びパドックで馬を見たりフードコートでカレーを食べたりデータにしがみつくおじさんたちに混ざったりしながら阪神競馬場を堪能して1日が終わった。競馬場は常に清掃されていて清潔だしどこにでも警備員がいるのでとても快適だった。アプリでくじ引きをしたらタオルが当たったし、キャッシュレス用のカードを作ったらネックストラップも貰えた。馬券で大負けしない限りは日がな一日ここで過ごすのも悪くない。ただ大負けしたら取り返すために帰れなくなる可能性もある。万馬券とやらを当てて1度でも脳汁が出たらきっと抜け出せなくなるだろう。

ただそれを差し引いても、ちょっと競馬を好きになった気がする。

 

競馬好きは全員テニプリの乾だと思っている、ウインズ京都

30代になって初めて競馬をやってみた。FXとCFDを除けば生まれて初めてのギャンブルである。競馬の知識なんてウマ娘を少しかじった程度だから、「中山の直線が短い」と「仁川には坂がある」こと以外は特に知らない。あとはオッサンが喚き散らしながら競馬新聞や馬券を投げ捨てていることぐらいだろうか。

馬に関する記憶も高校の修学旅行で行った北海道での乗馬体験ぐらいで、馬の背中にまたがり馬場を歩くだけだったが、それでも3メートル近い高さから友人を見下ろすのはなかなか愉快だった。しかも乗り降りする階段の傍でピタッと止まってくれるし、表情は大変穏やかだし、そのくせ本気を出せば原付よりは早く走れるというので、「君はなかなかカッコいいやつだな」とその時は素直に感心したのを覚えている。

それから時を経て30代が体に馴染んできた頃、「馬が一生懸命走るってのはカッコいいよな」と思い、とりあえずウインズに行ってみることにした。いわゆる「場外馬券売り場」というもので、全国の中央競馬の馬券を買うことができるし、レースも中継されているし、当然オッサンたちが中継画面を見ながら叫んだり嘆いたりしている様子を見ることができる。さぞ混沌としているかと思いきや、馬券を買うオッサンたちは競馬新聞やスマホをじっと睨みながら勝ち馬を予想しているのでその様子はさながらテニプリの乾のようであった。

この時に買った馬券はナミュール複勝900円で、3着までにゴールできれば勝ちとなる。ATMのような機械にマークシートと1000円札を入れると、その代わりに「馬券」が出てきた。大きさは名刺より少し小さく、紙質は新幹線の切符より柔らかかった。これを100円で買うやつもいれば数十万で買うやつもいるし、100万円に化けるかもしれないし紙切れになるかしれないというのだからギャンブルって変なシステムだ。

レース中はオッサンたちに混ざって「頑張れ!」と叫んで、ナミュールは最後の直線で中段からぐんぐん前に伸びて2着に入った。妻の買った単勝100円のカイザーミノルは外れていた。馬券を再び機械に入れると1000円の馬券が1600円ぐらいになって出てきた。あぶく銭はさっさと使うに限るので、夕飯は王将で瓶ビールを飲んだ。

お金が増えたのは良かったけれど、それだけならドル円天然ガスの売買に手を出しているのと大して変わらない。むしろあちらの方が扱う金額も勝ち負けの結果も大きい。それでも馬が一生懸命走っている姿はなかなかカッコよかったので、次は競馬場に行ってみることにした。十数頭の馬が走るのだからさぞカッコいいことだろう。

ウインズから出るとき、オッサンたちが負けた馬券や競馬新聞を次々とゴミ箱に捨てているのを見た。彼らも結局のところ乾のようにデータを捨てるのだ。お前は性学の恥なんやで。